「宇奈月温泉 総湯」、「とちの湯」を管理する
元・黒部市地域おこし協力隊員/大高建設 鈴木杏奈さん-1

「宇奈月温泉 総湯」、「とちの湯」を管理する
元・黒部市地域おこし協力隊員/大高建設 鈴木杏奈さん

富山県東部、富山湾に面し、黒部川(くろべがわ)下流域に位置する黒部市。

日本名水百選に選ばれた湧水が点在し、宇奈月温泉(うなづきおんせん)を有する、“名水”と“温泉”のまちです。
このまちの『大高建設(おおたかけんせつ)』に勤務し、「宇奈月温泉総湯(そうゆ)」と「とちの湯」を運営管理する、鈴木杏奈(すずき・あんな)さんに話を聞きます。

 

Iターンで黒部の地域おこし協力隊員に


鈴木さんは静岡県浜松市の出身で、令和2年9月から3年間、黒部市の地域おこし協力隊初の女性隊員として活動しました。移住・定住の促進を使命とし、演劇科出身の特技を生かした、宇奈月温泉が舞台のショートムービーの制作などで、地域の魅力を発信しました。

任期中はたくさんの方々との出会いがあり、「よく来てくれたね」という言葉をかけてもらうたびに、鈴木さんは黒部の人の温かさを感じたそうです。

 

任期を終えても生活拠点を黒部に


自分を受け入れてくれた黒部のために、もっと頑張りたい、協力隊の任期だけでは足りない!と思っていたところ、現在勤める『大高建設』とご縁があり、黒部にとどまることに決めます。

そして同時期に、会社は、黒部市が所有する「宇奈月温泉総湯(そうゆ)」と「尾の沼(おのぬま)体験交流施設 とちの湯」の指定管理者に選定されました。その運営管理の仕事を、鈴木さんは初挑戦ながら担うことになったのです。

温泉街中心部にある「宇奈月温泉総湯」

富山地方鉄道・宇奈月温泉駅からもほど近い、温泉街の中心部にある総湯「湯めどころ宇奈月」は、地域の人と観光客が両方訪れる日帰り湯です。いずれも天然温泉掛け流しで、浴槽に黒部川の石を使った「桃の湯」と露天風呂付きの「月美の湯」があります。足湯や休み処、観光案内所も備えています。各種アメニティが販売されているので、まちを散策中にふらりと立ち寄って、気軽に入浴を楽しむことができます。
 

information


宇奈月温泉総湯「湯めどころ宇奈月」
住所|黒部市宇奈月温泉256-11
電話|0765-62-1126
営業時間|総湯9:00~22:00(受付 21:00まで) 
     観光案内9:00~17:00
休業日|毎月第4火曜日 
料金|高校生以上 510円 小・中学生 250円 小学生未満 無料

湖畔に佇む「尾の沼体験交流施設 とちの湯」


近くに大きな栃の木があったことから名づけられたという「とちの湯」は、館内のホール中央に、樹齢70年を越す立山杉がそびえるなど、地域の木材をふんだんに使用した建物で、尾の沼公園の自然が体感できる日帰り湯です。エメラルドグリーンの「うなづき湖」の先に、オレンジ色のトロッコ電車が走る景色が楽しめるのはこの温泉ならでは。内湯と露天風呂、休憩室があり、「総湯」同様、地元と遠方からの来館者が出会う交流の場になっています。
 

information


とちの湯
住所|黒部市宇奈月温泉6215
電話|0765-62-1122
営業時間|10:00 ~ 17:00 ※最終受付 16:30
休業日|冬季休業あり(12月上旬 ~ 翌4月中下旬) 
    営業期間中は無休 
料金|高校生以上 510円 小・中学生 250円
   小学生未満 無料

 

能登半島地震で泉質が一時期変化


どちらの湯も、上流の黒薙(くろなぎ)を源泉とする、弱アルカリ性の単純温泉です。
入浴後は富山弁で言う“つべつべ”=つるつるすべすべになる、“美肌の湯”として知られています。しかし、その成分が、県内でも最大震度5強を観測した能登半島地震の影響で、変質してしまった時期がありました。

お湯は本来、無色透明のはずが、この2館を含め、あちらこちらの温泉宿で湯舟やタイルが赤茶色に染まる異例の事態が発生します。富山県衛生研究所の成分調査によると、マンガンイオンの含有量が10年前の75倍になっていました。それが、大浴場の消毒に使う塩素と化学反応を起こしていることが分かりました。また保湿成分として化粧水にも使われるメタケイ酸が増えたのは良かったのですが、泉質が変わるなど、温泉にとっては根本が覆される一大事。結果的には5月末頃に、元のお湯に戻ったそうなのですが、鈴木さんにとっても大いに気を揉んだ出来事でした。

 

施設の修繕に追われた一年


地震による建物への影響はわずかでしたが、この一年は、もともと老朽化している設備の改修工事に追われたそうです。バルブや配管、熱交換器の故障など、鈴木さんにとっては未知の問題ばかりでしたが、その都度周囲に相談しながら解決してきました。

運営管理の仕事には、スタッフの労務管理や施設の衛生管理、設備の修繕、広報、企画プロデュースなどさまざまあります。今後はすばらしい環境を利用した催しを考えたり、現在はスタッフ不足で休止している「とちの湯」の食堂を復活させたりしたいとの希望も持っています。

 

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