緑と水が織りなす癒しの絶景。高山都が行く、立山の麓で育まれた歴史と自然巡り-1
背景の山のシルエット

緑と水が織りなす癒しの絶景。
高山都が行く、立山の麓で育まれた歴史と自然巡り

記事公開日:2023.11.08

立山連峰に抱かれた山麓に位置する富山県立山・上市エリア。富山市中心部から車で30分ほど、少し足を延ばすと、3000メートル級の山々が連なる雄大な山並みが。立山の麓で培われてきた歴史と文化、大自然の恵みを存分に受けるこのエリアの魅力を「自然」「リトリート」「手仕事」の3つのキーワードで紐解きます。忙しい毎日を過ごすなかで、日常から非日常へ。モデルの高山都さんが、自然と共に生きるやさしい営みを感じられるスポットを巡る旅に出ました。

仕事でもプライベートでも日本各地のいろいろな場所を訪れている高山さん。富山を訪れるのは実は2回目。上市町には初めての訪問です。

「富山は山も川も、田んぼもあって、日本の原風景を身近に感じられる印象がありますね。降り立った瞬間から豊かな自然に包まれている安心感もあって、初めての立山・上市でどんな出合いがあるのか楽しみです」

立山信仰のはじまりの地〈大岩山日石寺〉で過ごす神聖な時間

  • 立山信仰のはじまりの地〈大岩山日石寺〉で過ごす神聖な時間-0

    〈大岩山日石寺〉への参道にあたる百段坂から出発。

まずは、立山信仰のはじまりの地とされる〈大岩山日石寺(おおいわさんにっせきじ)〉を訪ねました。

「旅先でもお寺や神社にはときどき行くのですが、なにかお願いごとをするというよりは、いつも元気に過ごさせてもらってありがとうございます! とあいさつの意味を込めてお参りすることが多いです」と高山さん。

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    約1300年の歴史を誇る真言密宗大本山〈大岩山日石寺〉。

百段坂を上りきると、本堂が見えてきました。かつて立山連峰を目指す修験道が、旅の途中に安全祈願で訪れたことで栄えたお寺です。戦国時代に上杉謙信の兵火に遭ったものの、その後、加賀前田家の祈願所として再興し、日本有数の一大霊場となりました。

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    大きな岩に半肉彫りで彫られた〈不動明王磨崖仏〉の神秘的な姿に言葉を失う高山さん。

お参りしようと本堂の中をのぞいてみると、ふと高山さんの表情にかすかな緊張感が。
「すごい……迫力があるけど、神秘的……」と感嘆がこぼれます。

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    「国指定史跡」と「重要文化財」の二重指定を受けている〈日石寺磨崖仏〉 。

目線の先には、薄暗い洞窟のような空間に佇む、巨岩に浮き出る5躯の仏像。その中心に鎮座する仏像の両目を見開く表情と見下ろすような視線にいきいきとした迫力がみなぎっています。〈不動明王磨崖仏(ふどうみょうおうまがいぶつ)〉です。その大きさや保存状態の美しさから磨崖仏の日本最高傑作と称されることもあるのだとか。

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    しっかり真言を唱えて、お水をいただきました。やわらかくミネラル豊富な立山連峰の伏流水のおいしさに感動。

「藤水(ふじみず)」と呼ばれる磨崖仏の巨岩を巡って流れ出る霊水をいただけるスポットもありました。この藤水には「目の不自由な参拝者が夢で『大きな藤の木の水で目を洗うといい』というお告げを受け、水を探しあて洗ったところ目が開いた」という言い伝えがあるのだそう。その逸話が広がり、参拝にきた方が藤水を汲みやすいよう給水所を設置。今では富山の名水巡りの地としても人気の場所です。

「想像以上に冷たくて、まろやかでおいしい! 富山のお水は軟水なんですよね。たくさん歩いた後の体にも沁みます。ごくごく飲めちゃいますね」と高山さん。

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    美しい境内には、さまざまな見どころが。

十二支の守護本尊である「八体の仏」が、本堂横にありました。子、丑、寅……など、それぞれ守る十二支が決まっているのだそう。
「私の干支はどれかな……。仏像って表情がやさしくていいですね」(高山さん)

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    大きな仁王門の下にわらじのかたちをした健脚絵馬なるものを発見しました。旅行や登山、そして走ることがライフワークとなっている高山さんは、“元気に歩き、走り続けられますように”と絵馬に願いごとを。

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    「最近、ジョギング中に転んじゃったので、しっかりお祈りもしておかなきゃ」と念を込めてお願いする高山さん。

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    磨崖仏から連なる大きな岩にある滝修行の体験もできる六本滝。6つの竜頭から落ちる滝に打たれることで、六根(眼根・耳根・鼻根・舌根・身根・意根)の煩悩を清めてくれる。

富山では、「大岩のお不動さん」と親しまれている〈大岩山日石寺〉。広い境内の中は、魅力的な見どころが満載です。写仏や、巡礼、滝行などの修行体験も可能。

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    十二支滝の前で記念撮影。12本の滝には干支の守本尊が祀られている。ついつい自分の干支は……と探す楽しみも。

「こうして自分の足と気持ちを使って、実際に訪れてみるというのはすごく貴重な経験だなと改めて思いました。お祈りするのも、お水を汲むのも、生半可な気持ちではできないこと。そうやってお参りすると、心も体もしゃんと整う気がします」(高山さん)

Information 大岩山日石寺

address:富山県中新川郡上市町大岩163
tel:076-472-2301
access:富山地方鉄道上市駅から車で約10分
営業時間:9:00~16:00
休業日:無休

〈千巌渓〉で出合った自然が生み出した癒しの絶景!

  • 〈千巌渓〉で出合った自然が生み出した癒しの絶景!-0

    「こだまがいそう……。あ、私がこだまみたい?」とチャーミングな高山さん。

〈大岩山日石寺〉の六本滝を横に130メートルほど下ると一気に目の前が緑に染まります。青々と茂る草木や苔、勢い良く流れる川、そして小さな動植物たち。耳を澄ますと風に揺れる草木の音や川の水音が聞こえます。
訪れたのは〈千巌渓(せんがんけい)〉と呼ばれる渓谷。降り立った瞬間ひんやりとした湿気が体をまといます。

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    厳かさを感じる大きな岩があちらこちらに。自然の造形美に驚く高山さん。

「気持ちいいですね。こだまとか妖精とかがいそうな幻想的な雰囲気。空気も全然違いますね。こういう緑や森に囲まれていると心も安らぐし、自然と深く呼吸ができる気がするんです」と言いながら何度も大きく深呼吸。

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    巨大な岩は苔に覆われ、草木が生え、植物の生命力がみなぎる。

この大きな岩たちは、火山活動によりできたもの。約1600万年前、日本海拡大の過程でできたときの岩石です。岩には双岩抱き合う妹背岩、点空石、炉壇石、鯉梯石、蝦口石などの名前がつけられており、かつては修行の場にもなっていたのだそう。

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    普段から山歩きをするという高山さん。大自然を散策するときの、どこか少し緊張感もある感覚が好きなのだとか。

「緑豊かな自然のなかにいると、視覚だけでなく、水の音、木々の匂い、吹く風の感触……と五感がフルに動き出しますよね。こうして歩いているだけで、おだやかな空気に心も洗われて、瞑想しているような気持ちになります」(高山さん)

この地が昔から山岳信仰の聖地として、長い歴史を重ねてきた重みと理由を感じられる場所です。

Information 千巌渓

address:富山県中新川郡上市町大岩
access:富山地方鉄道上市駅から車で約10分

散策の疲れを癒やす〈旅館だんごや〉の美しすぎる名物そうめん

  • 散策の疲れを癒やす〈旅館だんごや〉の美しすぎる名物そうめん-0

    明治中期の創業当時そのままの木造建築が趣深い。

たっぷりと散策を楽しんだ後に味わいたいのが、名物の「大岩そうめん」。旅館やお食事処が並ぶ参道を歩いていると、あちらこちらに「そうめん」の文字が。情緒ある参道に佇む〈旅館だんごや〉は、100年以上前から修行のために訪れた僧侶のための宿として、この地に歴史を刻む由緒ある旅館です。

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    厳選された小麦粉と「大岩の藤水」と同じ水源の天然水を使って手打ちした「大岩生そうめん」は〈旅館だんごや〉の新名物(980円)。

まるで糸が並んだように繊細な美しいそうめんと盛りつけに、高山さんも思わずうっとり。

「食べるのがもったいなく感じてしまうほど、美しいそうめんは初めてです。散策して疲れた体にも合うし、さっぱりしていておいしい!」(高山さん)

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    「このまま2杯くらいは食べられちゃいそう……」と高山さん。

「生そうめんは、当館で粉から打ってつくっている自家製生麺を使っています。利尻昆布、干し椎茸、うるめ鰯で取った風味豊かなおだしを合わせています。お水は、立山連峰の雪解け水を使用し、ミネラルたっぷりでおいしさを引き出してくれるんです」と〈旅館だんごや〉の滝川さん。

「麺はキュッと締まって、喉越しはつるりと滑らか。想像以上にもちっとした食感で、いつも食べているそうめんとは全然違う感じがします。風味豊かなおだしとも合いますね」と箸が止まらず、高山さんも舌鼓を打つほどのおいしさ。

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    生麺の風味と食感、そして3年寝かせた乾麺のコシと喉越しを楽しめる「生そうめん&そうめん食べ比べセット」(1280円)。それぞれに合うつゆでいただきます。

室町時代から戦国時代にかけて、多くの僧兵が訪れた〈大岩山日石寺〉。そうめんはその頃、精進料理を食べるお坊さんのために振る舞われていたのだそう。

大岩の冷たい水にさらされてコシの強いそうめんと、やさしいおだしが、お不動さんを拝み、新緑の渓谷を散策した体にもやさしく沁み入ります。寒い季節にはあたたかい「にゅうめん」も楽しめます。大岩山ならではの味わい、ぜひご賞味あれ。

Information 旅館だんごや

address:富山県中新川郡上市町大岩32
tel:076-472-2306
access:富山地方鉄道上市駅から車で約10分
営業時間:11:00~15:00
休館日:4月下旬~10月末まで無休、11月以降は完全予約制
※最新の情報については、公式サイトでご確認ください。

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「派手なパワースポットというよりも、自分のペースを大切にしながら、この場にいるだけで心がおだやかになる。静かで厳かな時間を体験できました。豊かな自然に囲まれながら、いつもより少し時間をかけて長い階段を上ったり、水の音に耳をすませてみたり、深呼吸してみたり。神様や自然と対話しながら、ゆったりと時間が流れていて、リラックスしているけれど、どこかで集中している。その緊張感とのバランスがすごく心地よかったです」と高山さん。
少し足を延ばしてでも一度は訪れたくなる、富山の知られざる魅力が立山・上市エリアには、まだまだありそう。次はどんな旅になるでしょう?

Profile 高山都-1

Profile 高山都

1982年生まれ。モデル、女優、ラジオパーソナリティ。商品のディレクションなど幅広く活動し、丁寧な生き方を発信するInstagramも人気。趣味は料理、ランニング、器集め、旅行。

credit text:花沢亜衣 photo:黒川ひろみ hair & make:鈴木智香


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