富山県まで足を運んででも
食べたい、紅ズワイガニ-1

富山県まで足を運んででも
食べたい、紅ズワイガニ

紅ズワイガニは鮮度が「命」

紅ズワイガニの美味しさの決め手は「鮮度」。非常に水温が低い深海に生息しているため、カニ自らの身体のなかにエサを分解するタンパク質分解酵素を蓄えている。生きている間は問題ないが、死んでしまうと自らの酵素の働きによって筋肉を自己消化し、可食部が溶けてなくなってしまう。このため、水揚げした後、新鮮な状態で流通させることが何よりも大切なのだ。

新湊の新鮮な魚介と店主夫婦の温かい人柄で
お腹も心も満たされる

「昼セリで仕入れた紅ズワイガニは、なるべく早く茹であげます」と教えてくれたのは、新湊漁港のほど近く、かつての花街にたたずむ「割烹 松山」の店主で板前の松山健さん。妻の美由紀さんと二人で切り盛りする同店は、今年で開店38年目を迎えた。

紅ズワイガニの漁が解禁されると瞬く間に全国からの予約客でにぎわう。特に、紅ズワイガニを丸ごと一匹使った「紅ズワイガニのしゃぶしゃぶとお刺身」(要予約)など、地元の魚介類を余すところなく堪能できるコース料理が人気だ。

「若い時はたくさんのお客さんを迎えることでがむしゃらでしたが、今は遠くからもリピートしてもらえる店づくりを心掛けています」と話すのは女将の美由紀さん。「新湊の新鮮なカニや魚介を“やわやわ”(=ゆったり)と味わってほしい」と笑顔を見せる。高齢のご夫婦にはカニ一匹を使った1人前のコースをシェア、若いカップルでも手が届くコース料理をつくる……など、きめ細かいサービスに惹かれる客も多い。松山さんが腕をふるった料理でお腹が膨れることはもちろん、ふたりの温かい雰囲気に心まで満たされるお店なのだ。

 

割烹 松山
住所|富山県射水市立町2-37
Tel|0766-82-4100
営業時間|11:30~14:00、17:00~22:00(要予約)
定休日|水曜日

日本でも有数の水深の深い湾を抱く富山県。漁場が近く新鮮な魚介が水揚げされる、という地の利に甘んじることなく、漁業者と料理人が手をとり合って、美味しく、かつサスティナブルな海の幸を届ける努力をしている。そのような素晴らしい人と食材に出合える富山は、まさに足を運ぶ価値のある土地といえる。

text: Tomoko honma photo: Hideyuki Hayashi

※本記事の情報は令和4年11月現在の情報です。

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