世界文化遺産 ~なつかしき日本の原風景~五箇山合掌造り集落-1

世界文化遺産 ~なつかしき日本の原風景~五箇山合掌造り集落

のどかな山村風景が広がる、世界遺産のある五箇山地域。こぢんまりとした集落には合掌造りの建物が立ち並び、田んぼや石垣、雪崩から守るための雪持林など、今も昔と変わらない姿がそこにあります。素朴で美しい景観は、どこか懐かしい日本の原風景そのもの。豊かな自然が見せる四季折々の風情を楽しめます。
今でも人々の生活が息づく小さな山里を訪ねて、世界遺産の魅力に触れてみませんか。

世界遺産に登録された五箇山合掌造り集落

五箇山は、富山県の南西端に位置する自然豊かな地域。庄川沿いに40の集落が点在し、どこか懐かしいのどかな山村風景が広がっています。
その中で相倉(あいのくら)と菅沼(すがぬま)の2つの集落には、合掌造り家屋をはじめ伝統的な建物が数多く残り、今でもそこで人々の生活が営まれています。1995年、日本の木造文化を代表する合掌造り家屋群を中心とする貴重な農村景観や、受け継がれてきた文化が評価され、岐阜県白川郷荻町集落とともに「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として、世界文化遺産に登録されました。

相倉合掌造り集落

標高約400mの段丘上にあり、細長い台地に広がる相倉合掌造り集落。20棟の合掌造り家屋が現存し、今も昔ながらの生活が息づいています。家屋の多くは、江戸時代末期から明治時代に建てられたものですが、最も古いものはなんと17世紀にまで遡ると考えられています。
駐車場から段々畑を5分ほど登ったところには、集落を一望できる展望エリアがあります。四季折々の美しい自然に囲まれた相倉の全景が望める、絶好の撮影スポットです。集落内には、合掌造り家屋を利用した資料館のほか、お土産・飲食店、民宿なども充実。集落の生活の様子や歴史、伝統文化に触れることができます。どこか懐かしく美しい心癒される非日常の風景が広がっています。

菅沼合掌造り集落

庄川沿いにたたずむ菅沼合掌造り集落。豊かな自然に囲まれたこの小さな集落には、9棟の合掌造り家屋が現存しています。そのうち8棟は江戸時代末期から明治時代初期に建てられたものですが、1925年(大正14年)に新築されたものも1棟あり、この時代まで合掌造り家屋が造られていたことがわかります。
美しい日本の原風景を堪能できるのはもちろん、集落内には江戸時代の主産業を伝える「塩硝の館」や「五箇山民俗館」があり、五箇山の歴史と伝統を学ぶこともできます。豊かな自然に囲まれた素朴でのどかな景観に、まるで遥か昔にタイムスリップしたかのような感覚を味わえることでしょう。

<歴史> 秘境が世界遺産になるまで

縄文時代から人々の生活が始まり、約4千年の長い歴史がある五箇山。近年まで満足な交通路がなく、険しい地形と冬季の豪雪から、かつては秘境と呼ばれていました。平安時代末期には、源平の合戦で敗れた平家の落武者が逃れ住み着いたとする落人伝説が残されており、「落人のかくれ里」としても知られています。
江戸時代には加賀藩領となり、加賀藩の庇護のもと、塩硝(えんしょう)や養蚕、和紙づくりが盛んに行われ、住民の生活を支えていました。合掌造り家屋はこれらの製品を作るために建てられた住居兼工場だったのです。今でも茅葺屋根の葺き替えを村をあげて行っているように、人々が互いに助け合う「結(ゆい)」の精神がしっかり根付き、地域の人々の連帯によって数百年も変わらぬ景観が守られています。長い歴史の中で受け継がれてきた人々の暮らしそのものが貴重な財産であり、世界遺産選定に繋がったのです。

<建物> 合掌造りってどんな家?

合掌造り家屋は、日本有数の豪雪地帯で知られる五箇山・白川郷で見られる独特の建築様式。「合掌」は、左右の掌を合わせた腕の形に由来すると言われています。最大の特徴は三角形の”茅葺屋根”。雪を落としやすくするため、60度もの急勾配になっており、釘は一切使わず組み立てられています。また、広い屋根裏での養蚕や、土間での和紙作り、床下での塩硝作りなど、空間を有効でなおかつ快適に利用する工夫がなされていました。雪の重みや強風に耐える強固な造り、さらに生活の場と生業の場をひとつにした、人々の生きる知恵が生んだ合理的な建築なのです。
五箇山は加賀藩の手厚い保護を受けたため、重厚感あふれる合掌造りが立ち並びます。内装も豪華なものが多く、鍋の高さを自在に調節できる「自在鍵」がある囲炉裏も五箇山ならではの特徴です。

<暮らし>受け継がれた2つの生業

加賀藩政時代、五箇山の土地は稲作に向かず、人々が生きていくための資金源として、養蚕や塩硝(えんしょう)などの製造が一大産業でした。人里離れ、雪深く幕府の目の届きにくい五箇山は、塩硝を秘密裡に製造するのにうってつけの場所。そして加賀藩は藩政崩壊までの約260年間、五箇山の村々で作られた塩硝を大量に買い上げました。その質と量は、日本一であったと言われています。
屋根裏での養蚕と地下での塩硝製造は、加賀藩の財政を陰で支えました。それにより藩から手厚い庇護を受けたため、重厚な合掌造りが維持されてきたのです。

五箇山を巡ろう!

今も人々が暮らす集落には、貴重な史跡はもちろん、世界遺産の暮らしや歴史がわかる施設、休憩処やお土産店と、見どころ満載!のんびり散策をして、世界遺産・五箇山の魅力をたっぷり満喫してください。

  • 五箇山総合案内所

    五箇山総合案内所

    五箇山の地図や周辺のパンフレットが揃うほか、無料で五箇山民謡「こきりこ」や「麦屋節」の映像が見られます。ゴザ帽子とワラのふかぐつを試着して「ゆきんこ体験」もおすすめです。

  • 国指定重要文化財 村上家

    国指定重要文化財 村上家

    五箇山の中心にあり、最も古い合掌家屋のひとつ。囲炉裏を囲んで五箇山や村上家の説明を聞くことができ、さらに予約すれば「こきりこ踊り」の民謡鑑賞もできます。

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  • 国指定重要文化財 岩瀬家

    国指定重要文化財 岩瀬家

    8年の歳月をかけ建てられた日本最大の5階建て合掌造り。囲炉裏端で当主の説明を聞いたり、天井裏へ登り見学することもでき、先人の暮らしを体感できます。

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  • 相倉民俗館・伝統産業館(相倉)

    相倉民俗館・伝統産業館(相倉)

    合掌造り家屋を利用した資料館。民俗館では先住民が使用していた生活道具や農具などの民俗資料、伝統産業館では五箇山の伝統産業の和紙や塩硝に関する資料などを展示しています。

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  • 塩硝の館(菅沼)

    塩硝の館(菅沼)

    五箇山の一大産業であった黒色火薬の原料「塩硝」の製造を展示説明する資料館。材料の採取、塩硝作り、出荷までの過程を人形や影絵でわかりやすく再現しています。

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  • 五箇山民俗館(菅沼)

    五箇山民俗館(菅沼)

    菅沼最古の合掌造りの内部を改築した資料館。先人の知恵が生かされた生活用具や資料約300点が展示されています。階段を上り、屋根裏の構造を見ることもできます。

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五箇山を体験しよう!

旅をいっそう満喫できる、五箇山ならではの体験をしてみませんか?歴史や伝統文化、豊かな自然…五箇山の奥深さに触れれば、きっとここでしか味わえない素敵な思い出になるはずです。
夏は桂湖でカヌー、冬はウインタースポーツも楽しめます。

  • 五箇山和紙漉き体験館

    五箇山和紙漉き体験館

    相倉集落内にあり、趣ある合掌造り家屋の中で紙漉き作業を体験できます。和紙でかたどった「紙塑(しそ)人形」に思い思いの絵付けをし、自分だけの「猫の置物」を作れます。

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  • 農事組合法人 五箇山和紙

    農事組合法人 五箇山和紙

    400年以上の歴史をもつ和紙づくりを体験!紙漉き場の見学は自由で、和紙の原料が紙として漉きあがるまでの過程を見ることができます。工房横のショップには、和紙グッズが豊富に揃います。

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  • 道の駅たいら 五箇山和紙の里

    道の駅たいら 五箇山和紙の里

    五箇山和紙製品が豊富に揃う和紙の里。合掌造りの体験館では、はがき作りなどの手漉体験ができます。併設の道の駅たいらでは、かわいい五箇山和紙の雑貨も販売しています。

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  • 喜茶 和 ででれこでん

    喜茶 和 ででれこでん

    「こきりこ」の伝統的な踊りや、108枚のヒノキの板を手作業で編み合わせ楽器を作る「ささら編み」を学べます。最後はこきりこ衣装に、編んだささらを持って記念撮影を楽しんで!

日本の原風景をライトアップ

相倉集落・菅沼集落では季節ごとにライトアップが開催され、春は水田に映る”逆さ合掌”、秋は黄金色に輝く稲穂など、四季折々に違った表情を見られるのが魅力。夕闇に浮かぶ幻想的なふるさとの原風景を体感することができます。冬の季節には白銀の世界に合掌造り家屋が浮かび上がり、やわらかな光に包まれた集落の幻想的な風景が広がります。まるで別世界にいるような美しい光景は見るものの心を奪い、非日常の時間を堪能できます。

五箇山を味わおう!

五箇山には清流に育まれた川魚、季節ごとに実る山菜や野菜など、自然の恵みがいっぱい。五箇山ならでは旬の食材をふんだんに使った郷土料理は、心にしみる滋味豊かな味わいです。世界遺産とともに、昔から変わらない山里の味をご堪能あれ。

  • 五箇山豆腐 とうふ工房 喜平商店

    五箇山豆腐 とうふ工房 喜平商店

    古くから独自の製法でつくられている五箇山豆腐は、水気が少なく縄で縛っても形が崩れないほどの堅さが特長。大豆の旨味が凝縮された豆腐本来の味を今も楽しむことができます。

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  • 五箇山旬菜工房 いわな

    五箇山旬菜工房 いわな

    五箇山の冷たい清流で育った岩魚(いわな)料理の豊富なメニューが並びます。定番の塩焼きはもちろん、ほんのりピンク色でプリプリ食感がたまらない握り寿司も人気です。

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  • お休み処・茶店 まつや

    お休み処・茶店 まつや

    「栃餅」は古くからこの地域で作られ、栃の実を使った昔ながらの素朴な風味。体も温まる「栃餅ぜんざい」は自慢の一品です。合掌造りの茶屋で五箇山ならではの食の魅力をお楽しみください。

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  • 五箇山赤かぶボベラ よりあい処丸池

    五箇山赤かぶボベラ よりあい処丸池

    お土産店にcaféが併設しており、合掌造りの形をした「五箇山ぼべらモンブラン」も店内で食べることができます!食べて美味しく、見た目もフォトジェニック!

五箇山に泊まろう!

五箇山では、合掌造りの宿で「世界遺産に泊まる」という貴重な体験ができます。岩魚の塩焼きや山菜料理など山里の恵みをたっぷり味わい、囲炉裏を囲いながら語らう夜は、世界遺産ならではの格別なひと時。目の前に広がる満天の星空は忘れられない美しさです。朝は静寂の中に聞こえる鳥のさえずりや、澄んだ空気に心洗われます。宿泊しないと味わえない様々な体験が、心と体を癒してくれるでしょう。

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ふぉとやまライター体験レポート-1

ふぉとやまライター体験レポート

「合掌造り」と呼ばれる茅葺の家屋は、とても貴重で、ここ「相倉合掌造り集落」には、20棟の「合掌造り」があります。その中には民宿もあり、観光客が泊まることも出来ます。
家族(大人2人、子供3人)で世界遺産「相倉合掌造り集落」に泊まり、昔ながらの暮らしの体験や地元の美味しい料理などを堪能してきた様子をお届けします。

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五箇山へのアクセス/相倉・菅沼集落間のアクセス

富山駅から五箇山(相倉)までは鉄道とバスで約1時間35分。車では、北陸自動車道経由で五箇山ICまで約1時間です。
富山空港から富山駅までは空港連絡バスで約25分。高岡エリアまでは乗合タクシー「そらタク」も運行しています(要事前予約)。車では、五箇山ICまで約1時間の道のりです。
相倉・菅沼集落間は車で20分ほどの距離。集落間や周辺にも見どころが点在!ぜひ、規模や風景の異なる2つの集落を訪ねて、それぞれの魅力を体感してください。

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世界遺産バスについて-1

世界遺産バスについて

五箇山への起点となる高岡駅や新高岡駅からは、高岡駅~白川郷まで毎日運行している「世界遺産バス」の利用が便利!約1時間で世界遺産(相倉)に到着します。乗り降り自由なフリーきっぷもあり、五箇山をお得に満喫できます!

加越能バス 世界遺産バス

五箇山を守ろう!観光のマナー

世界遺産合掌造り集落および五箇山の自然環境保護のために、マナーを守って観光しましょう。
・指定の場所以外は禁煙です。
・田畑・軒下を含む民家・私有地に立ち入らないでください。
・草木は採取できません。
・住民の車が通行します。道を譲ってください。
・日没後や早朝の立寄り、散策はご遠慮ください。
・写真撮影などで他の方の行く手を遮るなど、他の方の迷惑になるような行動は謹んでください。
・ゴミは各自でお持ち帰りください。

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ふぉとやまライター「あいのくま」が現地から徹底取材!-1

ふぉとやまライター「あいのくま」が現地から徹底取材!

私は富山県南砺市にある世界遺産・五箇山相倉合掌造り集落の住民で、住んでいる家も合掌造り家屋です。世界遺産に住むという非日常的な立ち位置から、より多くの方々に五箇山地域の魅力をお伝えしていけたらと思います。

取材記事はこちら

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