とやまの人の、好きなとやまvol.2-1

“とやまの人の、好きなとやま” を探しに出かけてみませんか?

富山の「人」「つながり」にフォーカスし、そのバックストーリーを通じて富山ならではの魅力をお届けする「Hitotoyama」(ひととやま)。音が聞こえるような旅の臨場感をお伝えする特集「旅の音」では、ハーブ畑のほか、アロマ工房やレストランなども擁する立山町の「ヘルジアンウッド」に注目します。地元で活躍する方の “とやま愛” 溢れるおすすめの食やスポット、タイムリーな富山の旬の情報もお届けします。

特集:旅の音|ハーブが香る立山の麓で、満ち足りた時間を過ごす

北アルプス立山連峰の麓に、食事やトリートメント、宿泊など多彩な方法でハーブの力を伝える複合施設「ヘルジアンウッド」があります。田んぼとハーブ畑が広がる敷地内に散りばめられた建物は、それぞれの役割を果たしながらハーブと人をつないでいます。この場所に身を置くと、ハーブ畑を抜ける風、鳥や虫たちの声、足の裏に感じる土の感触、眼下に広がる富山平野と富山湾など、五感に響くすべての要素が、日常の喧騒を忘れさせてくれます。まっさらな自分に戻れる場所へ、足を運んでみませんか。

香りの力に導かれて、ハーブが揺れる村へ
 

富山県は「くすりの富山県」と呼ばれるほど、医薬品製造が盛んに行われています。「ヘルジアンウッド」は、長年にわたって医療用および一般医薬品の製造を手がける「前田薬品工業」の前田大介(まえだ だいすけ)代表の発案によって、2020年に誕生しました。前田さんは現職に就任した当初、疲労が重なり、起き上がるのも困難になるほど心身が悲鳴を上げていたそうです。そんなとき、友人のすすめで出かけたカフェで香りに秘められた力を実感。これをきっかけに精油(エッセンシャルオイル)の効果に興味を抱くようになり、製薬会社の立場から香りの力を紐解くことを決意しました。立山連峰が近く、富山湾が一望できる静かな中山間地に、ハーブ畑と田んぼ、レストラン、アロマ工房、貸切サウナホテル、トリートメント施設が広がっています。
 

「散居村(さんきょそん)」のように施設が点在
 

大きな特徴は、広大な敷地に施設を点在させていることです。これは砺波(となみ)平野の田畑の中に民家が分散して建つ「散居村」からヒントを得ているそう。各建物はデッキでつながっており、どの建物も人と自然に優しい素材で造られています。扉を開いて屋外に出るたびに新鮮な空気が体を包み、気持ちがリセットされるのを実感できます。
 

「世界一美しい日本の原風景」を目指して
 

敷地内の農地では、前田さんの「世界一美しい日本の原風景をつくる」というビジョンに共感した有澤 渚(ありさわ なぎさ)さんが汗を流しています。ラベンダーをはじめ、ローズマリー、日本ハッカなど和洋のハーブを化学肥料や除草剤を使わずに栽培。「成長はゆっくりですが、土地に合わせて育てることをモットーにしています」と有澤さんが教えてくれました。ラベンダーは剪定で風通しをよくし、手作業も交えながら丁寧に花を摘み取るなど、栽培に手間ひまを惜しみません。「ハーブづくり、米づくりの過程の景色も、みなさんに楽しんでいただきたい」と語ります。
 

香りに秘められたパワーを研究
 

アロマ工房では、施設内で収穫したハーブをはじめ、県内のヒノキやユズなどの植物から精油と芳香蒸留水を抽出しています。ここで抽出された素材は「前田薬品工業」のアロマブランド「Taroma」の製品などに生まれ変わります。「Taroma」の製品は、オリジナルのハーブティーなどとともにアロマ工房で購入できます。
精油と芳香蒸留水の抽出は同社の「新蒸留研究所」が担っています。同研究所の河合英理子さんは理化学研究所の出身。未病に対するアプローチや、蒸留を創造的に自由に実験し続けるという事業方針に惹かれて仲間に加わりました。香りの心身への作用を研究し、香りの数値化や可視化に向けた表現方法を探っていると言います。「ハーブを育てるところから香りづくりをしているので、どこまでも香りを追求できます。この環境の可能性に感謝して日々研究を続けています」

 

心も体も癒す、オーダーメイドの施術に大満足
 

「Taroma」のエッセンシャルオイルを贅沢に使ったスパでは、ハーブ畑を眺めながらセラピストによるトリートメントを受けることができます。トリートメントの前に行う季節のハーブを使った足湯が、癒しの時間へのスイッチ。一人ひとりのコンディションに合わせて施術内容を決めるオーダーメイドのトリートメントで、疲れた心と体をほぐしてくれます。室内には2つのベッドが用意されているので、家族や友人と同時に施術を受けられます。
 

食材や器でも富山の魅力を発信
 

レストランには個室でコース料理を味わえる「The Table」(要予約)と、ランチタイムにカジュアルなプレートを楽しめる「The Kitchen」があります。「The Table」では、フランスや東京で料理を学んだ滑川市(なめりかわし)出身の熊野泰博(くまのやすひろ)シェフが腕をふるいます。提供しているのは、ジャンルや形式にこだわらない自由な発想の料理。「レストランは富山の魅力を知ってもらう場所。ブリやホタルイカなど名の通った食材以外にも、富山にはいいものがたくさんあります。生産者の元を訪ねて、納得のいく食材を集めています」。畑のハーブももちろんコースの中のアクセントとして活用しています。地元作家の器の取り合わせも興味深いところ。

サウナと立山の雪解け水で最高の“ととのい”を
 

貸切サウナホテル「Hive」には、高温タイプ(90〜100度)と寝そべりタイプ(80度)のサウナがあります。立山の雪解け水を汲み上げた清冽な水風呂はやわらかな肌ざわりが評判。インド出身の支配人・アチャリヤさんは「サウナは頭をすっきりとさせるから、ここではアイデアがたくさん生まれます。一緒に過ごす仲間たちとの絆もきっと深まりますよ」と語ります。アチャリヤさんによるサウナ飯「アチャカレー」のファンも多いそう。
 

香り、食、景色から富山の豊かさを実感
 

「ヘルジアンウッド」は、初めて訪れたのに懐かしさを感じる、心の原風景と呼びたくなるような場所。一人ひとりの心に語りかけるような景色、四季折々の恵みを実感できる食、そして眠っていた感情を呼び起こし、極上の癒しへと誘う香りが待っています。ハーブの揺れる里山を訪れ、富山で過ごす時間をより豊かで満ち足りたものにしませんか。2025年以降には、一棟貸しの宿泊施設がさらに2棟オープンする予定です。
 

Healthian-wood(ヘルジアンウッド)
富山県中新川郡立山町日中上野57-1
レストラン The Table/The Kitchen 076-482-2536
アロマ工房 The Workshop 080-3525-8964
トリートメントスパ The Spa by Taroma 080-5853-6224
貸切サウナホテル The Hive 070-8813-6905
※営業時間・定休日は各施設により異なる。
P/あり
アクセス/北陸新幹線富山駅からタクシーで約35分。

 

わたしのとっておき|中川裕子さん

「100年受け継がれるソウルフードを目がけて、
歴史と人情の街・福光を歩いてみてほしい」

福光のおでんといえば「まるやま」

実家のすぐそばにある「春乃色食堂」は、大正12年から続く老舗。私にとって、小さい頃からずっと通い続けている文字通り“馴染みのお店”です。初めて来たのは小学1年生の時。夏休みの最終日に、頑張ってラジオ体操に通ったご褒美として家族に連れてきてもらいました。また、地元の春祭りの前にはみんなでここに集まって、うどんやラーメンを食べてから出発するというのが恒例だったんです。楽しい思い出がたくさん詰まっていて、その頃と味もお店の雰囲気もまったく変わらない。来るたびにホッとした気分にさせてくれる、私にとってなくてはならない場所です。

夏限定の冷やし中華も絶品ですが、涼しくなってきたら決まって注文するのが中華そば。素朴であっさりとしていて懐かしい味。家で作ろうとチャレンジしたけれど、何度やっても真似できません(笑)。寒くなってくるとメニューに天ぷらうどんが加わり、冬が始まるんだなと実感します。

なんといっても、ここの名物は、おでん。一年中おでんの鍋から甘い香りが立ちのぼっていて、お客さんのほとんどが注文するほど。この町のソウルフードになっています。なかでも私のおすすめの具は、「まるやま」。福光の方言で、がんもどきのことを指します。一個でお腹が満たされるほどボリュームがあって、だしの味が中までしっかり染み込んでいる。今日は鍋を借りて、晩御飯用のおでんをお持ち帰り。そんな田舎ならではのお付き合いも福光にはまだまだ残っています。

 

レトロな風情が残る裏路地

お店を出た後は、近くの路地を散歩するのも楽しみのひとつ。大通りから一本路地に入ると、古い石垣を残す家がたくさんあって、静かで風情たっぷり。また、福光で一番古い「新町(しんまち)商店街」にはレトロなお店や誰もが知る偉人の生家もいくつかあり、初めて来る人にはぜひ歩いてみてほしいですね。

 

わたしのとっておき|笹倉慎也さん・奈津美さん

「氷見の海って海面がキラキラと輝いて、
その光がまちを明るく照らしてくれるんです」

いつも暮らしのそばにある海

日本海って聞くと荒々しいイメージを持つ人も多いと思うんですけど、氷見は湖のように波のない穏やかな日がとても多くて、海沿いに住んでいるけど波が怖いと感じたことはあまりないんです。夜は静かな波音を聞きながら眠りについて、太陽を感じながら気持ち良い朝を迎える。そこが氷見の海沿いに住んでいることの大きな魅力だと思います。立山から朝日がだんだん昇ってくると海に斜めから光が差して、水面がまぶしいくらいにキラキラに光って。海が反射板の代わりになって、氷見の街を明るく照らしてくれるんです。
活気で溢れかえる漁港の朝セリの雰囲気も好きで、散歩がてらよく見に行きます。夏は1本100キロを超えるマグロが水揚げされることもあります。秋になればカマスやフクラギなどの小さな魚が多くなり、冬になればブリが出てきて……。そこに並ぶ主役級の魚たちを見て季節を知るというか。漁港は、海と私たちの暮らしとの接点でもあり、また自然の恵みをいただくありがたみを改めて感じさせてくれる場所でもあります。

 

氷見の街を一望できる丘

朝日山公園「見晴らしの丘」へは、子どもが生まれてからよく出かけるようになりました。平日は保育園のお迎えの帰りに夕暮れの公園で遊んだり、休みの日はお弁当を持っていってピクニックをしたり。普段は車で出かけるけど、晴れた日にはレンタル電気自動車「ヒミカ」で出かけるのもおすすめです。風も心地良くて、ゆっくり氷見の街を巡ることができてすごく楽しいですよ。

店主の愛がこもった、個性豊かなビール

氷見のブルワリー&タップルーム「BREWMIN’(ブルーミン)」は、宿から歩いてすぐの場所にお店があって、夜の散歩の時に立ち寄ることが多いですね。個性際立つビールがそろっていて、どれもおいしい。店主が根っからのビール好きで、その愛がしっかり込められている感じが伝わるんです。パッケージもかわいいので氷見土産にもおすすめです。


 

わたしのとっておき|藤井 奏さん

「ゆっくりと心が落ち着いて、ここでしか得られない何かがある。
日常を忘れて頭を空っぽにできる、僕にとってすごく貴重な場所」


 

歴史ある風情と人情が魅力の宿

入善駅(にゅうぜんえき)前にある「清八楼(せいはちろう)」は、昔からずっとお世話になっている老舗旅館です。子どもの頃は、地元のお祭りの打ち上げや、親族みんなで集まる時によく食事に連れてきてもらっていました。明治時代に糸魚川(いといがわ)から移築して130年という歴史ある建物。けやきの梁や柱、他ではなかなか見られない欄間や屏風絵など、当時の内装がそのまま残っていて、とても素敵なんです。
店主と女将、うちの両親はとても仲が良く、旅館を手伝っている娘さんも含めて、僕にとっては家族のような存在です。みなさん本当にあたたかくて、その人柄の良さがたくさんのお客さんを惹きつける理由だと感じます。
庭を眺めているだけでもゆっくりと心が落ち着いて、ここでしか得られない何かがある。仕事のことを忘れて頭を空っぽにできる場所って、すごく貴重です。特にここの朝食が大好きで、魚津(うおづ)にある女将の実家の「ハマオカ海の幸」から仕入れる干物は絶品。季節によっていろいろな魚が出てくるので、散々お酒を飲んだ次の日も早起きするほど、いつも楽しみにしています。

 

富山の良さをここで存分に味わってほしい

東京の友人たちが遊びに来たときの宿は、決まってここ。夕食の後は、みんなでロビーでくつろぎ、しゃべりながらお酒を飲みます(笑)。そんな学生時代の合宿を思い出すようなアットホームな雰囲気に、みんなも感動して帰って行きます。
僕自身、ロンドンから帰ってきて久しぶりにここを訪れた時にはすごくホッとして、うれしかったことを思い出します。富山の魅力を存分に味わってもらえる、とても貴重な場所なんじゃないかなと思います。





 

とやま旬だより|立山Craft 2024 10th Anniversary

食と遊びと自然を満喫できるクラフトの祭典

全国のクラフト作家が一堂に集う、年に一度の「立山Craft」が今年も立山町(たてやままち)総合公園で開催されます。例年約1万人の来場者を誇る人気イベントも、今年で10周年。10月26日(土)・27日(日)の2日間にわたり、陶磁器や家具、アパレルや雑貨など、総勢101組の作家による世界にたった一つのハンドメイド作品がずらりと並びます。子どもたちも参加できる体験型ワークショップやスラックライン、遊具コーナーもあり、家族みんなで楽しめます。フードテントにはさまざまな食のジャンルの人気店が集結。素材にこだわった料理やスイーツ、ドリンクなどを提供します。田園風景が広がる自然豊かな場所で、心地良い生演奏を聴きながら、贅沢な時間を過ごしてみませんか? 詳しくは、「立山クラフト」の公式ウェブサイト・インスタグラム・Facebookをチェック。




■日時 2024年10月26日(土)10:00~16:00
         27日(日)9:00~15:30
         ※雨天決行

■場所 立山町総合公園 (富山県中新川郡立山町野沢1)
■入場料 500円(中学生以下無料)
■お問い合わせ:NPO法人立山クラフト舎  
        メール tateyama_craft@yahoo.co.jp
          TEL   090-6508-4157



 

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