新湊発! 富山のまつりを熱く盛り上げる
越中祭青年会 副会長/cafe & BAR OWATOCO店主
五十嵐友輔さん-1

新湊発! 富山のまつりを熱く盛り上げる
越中祭青年会 副会長/cafe & BAR OWATOCO店主
五十嵐友輔さん

射水市新湊地区(いみずししんみなとちく)の内川(うちかわ)沿いは、ノスタルジックな雰囲気が漂い、新店舗が次々と登場する注目のスポットです。

歴史と文化が息づくこの地区では、5月の「獅子舞」や、10月の「新湊曳山(しんみなとひきやま)まつり」など祭りが盛んに行われ、地域の活気を感じることができます。

この地を中心に、富山の祭りシーンを熱く盛り上げている越中祭青年会副会長でcafe & BAR OWATOCO(おわとこ)店主の五十嵐友輔(いがらしゆうすけ)さんにお話を伺いました。

 

祭り好きとなるきっかけ


今回の主役である五十嵐さんは、漁師町である新湊地区で生まれ育ちました。
幼いころから地域の祭りが大好きだったという五十嵐さんは「町内が一体になってハレの日、つまり非日常を楽しんでいる雰囲気が好きでした」と当時を振り返ります。

この地区の小学校では、「お囃子(おはやし)」を練習するクラブ活動があったり、新湊曳山まつり当日は学校がお休みになったりするなど、子どもたちが祭りに触れ合う土壌があると言います。

「子どもから大人まで地域が一つになって祭りを楽しむ、年代を問わず人と人をつなげるコミュニティの場になっていることが、祭りの醍醐味です」と話します。

 

新湊の祭りの魅力


そんな祭り好きの五十嵐さんに、新湊のまつりならではの魅力を伺いました。
5月に行われる獅子舞は町内ごとに獅子舞が行われ、地域の家を一軒一軒回るそうです。「獅子舞では武術を表現するものなどいろいろありますが、新湊地区の獅子舞は、獅子や天狗が登場し田植えや稲刈りを舞いにするなど、ストーリーを表現しています」とその特徴を話します。

松明(たいまつ)を使った勇壮で迫力満点の舞いは新湊の獅子舞ならではです。

 


毎年10月1日に行われる新湊曳山まつりの魅力は、「町内ごとに異なる13の曳山が漁師町らしい活気で巡行することです」と話します。県内では加賀の町人文化を色濃く受け継いだ華やかな山車などもありますが、好対照で、昼には「花山」、夜には「提灯山」と装いを変えながら町中を力強く曳き回る山車の姿が特徴です。

今年1月の能登半島地震では、同地区にも液状化現象をはじめとした大きな被害がありましたが、町の人たちの尽力もあり、今年も開催することができました。

 

観光客向けに獅子舞を


各町内で行われ、それぞれの色が楽しめる新湊地区の獅子舞。
しかし、観光客からは「いつ見ることができるのか」「どこに行けばいいのか」といった声もありました。

そこで五十嵐さんも所属している各町内の青年団で構成される連絡協議会は、地域の小学校の創校150周年記念に合わせて「獅子舞競演会」を開催し、多くの人が新湊地区の獅子舞を楽しみました。多くの人が獅子舞を楽しめる受け皿を作ることで、観光面でも地域に貢献したいと考えています。

 

獅子舞存続の危機に


2018年、五十嵐さんに危機的な状況が訪れます。
町内の青年団の人数が不足し、いずれ獅子舞の開催ができなくなる恐れがありました。

やめることも選択肢の一つでしたが、獅子舞を楽しみにしている子どもたちや、何よりも祭りを愛する地域の人々のために、伝統を残したいという強い思いがありました。反対意見もありましたが、町内だけでなく、町外の人々も受け入れながら獅子舞を存続させるという大きな決断をしました。

翌年、大学の友人たちをはじめ、地域外の人々を獅子舞の見学に誘い、その魅力を知ってもらおうとした五十嵐さん。
その結果、20名ほどが協力してくれることになりました。

 

越中祭青年会の発足


コロナ禍で祭りが開催できなくなった時期と同じころ、五十嵐さんは大学の卒業論文のため、ほかの祭りのフィールドワークを行っていました。各地の祭りを担う若手と情報交換をしたところ、他の地域でも祭りの開催に苦労していることを知ります。

情報交換を重ねるうちに、「祭りの継承」という共通の課題が浮かび上がります。これがきっかけとなり、祭り文化を後世に残していくため「越中祭青年会」が発足しました。

 

震災と祭りの復興に向けて


越中祭青年会では、各祭りの情報交換や広報活動を行うほか、担い手不足に悩む各地の祭りに助っ人として参加しています。2023年より助っ人として初参加した、通称「キリコ祭り」と呼ばれる石川県七尾市石崎町の灯籠(とうろう)神事もその一つです。

同地区は1月に発生した能登半島地震により大きな被害がありました。五十嵐さんら越中祭青年会は、彼らの手助けになればと復興支援のボランティア活動を自主的におこなったほか、被災者を元気づけようと同地区で獅子舞を披露しました。
※写真は同会公式Xより

 

地域を誇れる場に


県内外各地の祭りを盛り上げる五十嵐さんですが、新たな挑戦も始まりました。2024年10月1日、新湊曳山まつりが開催された同日に「cafe & BAR OWATOCO(おわとこ)」をオープンしました。

「内川には新しく人が来て活気が出てきました。だからこそ、もともとここに住んでいた自分たちでも、地域を盛り上げる場を作りたかったんです」と話します。

もともとは地元のお店があった跡地に、地域の人たちとDIYでお店を作り上げました。みんなで1つのものを作り上げる姿は、祭りとも重なったと言います。

 

地域を誇れる場に


「この地区は、熱量のある祭りがあり、おいしい食べ物に恵まれ、なにより熱くなれる人がいるまちです。このお店をはじめ、地域と県内外の交流の場となり、関係人口が増えてくれれば、いずれは祭りの活気にもつながるかもしれない。ぜひ、このまちに遊びに来てほしい。」

熱い思いを胸に、五十嵐さんの挑戦は続きます。

 

Information


cafe & BAR OWATOCO
住所|射水市中央町4-1
営業時間|カフェタイム12:00~15:00(LO14:30)
     バータイム18:00~23:00(LO22:30)
定休日|月曜日
※予約やお持ち帰りはInstagramのDMから
 

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