北前船交易で発展した、富山市岩瀬を歩く-1

北前船交易で発展した、富山市岩瀬を歩く

富山市北部にある東岩瀬は、かつて北前船の寄港地として栄えました。今も旧北国街道沿い(大町通り)には北前船交易で栄えた廻船問屋の屋敷が並び、当時の面影を色濃く残しています。ノスタルジックで静かな町並みは近年少しずつ変化していて、廻船問屋の土蔵がリノベーションされ、レストランや酒屋、作家のアトリエとして活用されることも増えてきました。また岩瀬は、世界で富山湾でしか漁獲が行われていないシロエビの水揚げ地でもあります。シロエビ料理を提供している飲食店もありますので、ぜひ味わってみてください。

アクセス

●路面電車を利用する場合
富山駅から市内電車の岩瀬浜行きに乗り、東岩瀬駅で下車。旧北国街道までは徒歩約10分。

●車を利用する場合
北陸自動車道 富山ICから約25分

●富岩水上ラインを利用する場合
富山駅から富岩環水公園(徒歩約10分)へ行き、水上クルーズ船乗り場で岩瀬行きに乗船。下船場から旧北国街道まで徒歩約10分。 
※運行期間は3月下旬から11月中旬まで

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富岩水上ライン-1

富岩水上ライン

富山市の中心部にある富岩(ふがん)運河環水公園から、港町・岩瀬エリアまでをつなぐ富岩運河。「富岩水上ライン」はそんな富岩運河をゆるやかに走る観光船です。

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岩瀬を豊かにした「北前船」の歴史を知る

北前船とは大阪と北海道を日本海回りで往復していた船で、東岩瀬からは主に米が積まれ、北海道から昆布や肥料用のニシンが運び込まれました。航路の途中にある寄港地でも荷物の売買を行い、商売ごとに利益が倍額になっていったことから富山では北前船のことを「バイ船」とも呼んでいます。一般公開している馬場家や森家は「岩瀬五大家」と呼ばれ、地域の経済発展や文化振興にも大きな影響力を及ぼす存在でした。

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簀虫籠(すむしこ)について-1

簀虫籠(すむしこ)について

大町通りを歩いていると、古い家屋の出格子は細い竹がびっしりと並んでいることに気が付くでしょう。これは「簀虫籠(すむしこ)」と呼ばれる格子で、外からは中が見えませんが、中に入ると外の様子がよく見えるすぐれものです。

贅を尽くした豪商の家屋「森家」

国指定重要文化財「北前船廻船問屋 森家」は、常駐するスタッフが内部を案内し、建物の構造や展示物を分かりやすく紹介してくれます。東本願寺(京都)の建立にかかわった棟梁を呼び、3年の歳月をかけて建てられた商家で、屋久杉や能登の黒松、小豆島の御影石など全国の銘木・銘材が多彩に使われています。「オイ」と呼ばれる和室は商取引をした場で、畳が小川のせせらぎのような模様敷になっています。ほかの部屋にも船絵馬が飾られていたり、鶴亀の釘隠しがあったりと、屋敷のいろんな部分に縁起物を使い願掛けすることで、航海の安全や無事を祈っていました。

東岩瀬の廻船問屋の筆頭「馬場家」

国登録有形文化財に登録されている「馬場家」は、岩瀬五大家の筆頭に挙げられ、北陸の五大北前船主のひとつに数えられています。1873年の大火の後に建てられた東岩瀬の中でも最大規模の住宅で、内部には「トオリニワ」と呼ぶ30mもの土間通路があります。馬場家9代当主の道久の妻はるは、夫を33歳のときに亡くして一家支える立場となりました。旧制富山高等学校(現在の富山大学人文学部・理学部)設立のために多額の寄附をしたことでも知られています。玄関そばの前蔵は展示スペースになっており、馬場家やはるの足跡をたどることができます。

馬場家の米蔵が、ビールの醸造所兼パブに

かつて馬場家の米蔵だった場所が、リノベーションを経て、クラフトビールの醸造とパブの営業をする『KOBO Brew Pub』に生まれ変わりました。近くで日本酒を醸す蔵元の酒粕を使ったビールや、富山市名産の「呉羽梨」のシロップを使ったビールなど、常時9種類ほどをラインナップしています。いろんな味を楽しみたい人には、4種を飲み比べできるテイスティングセットがおすすめ。タイミングが合えば、蔵の中央にある醸造スペースでチェコ出身の醸造家が作業する様子も見られます。

熟成酒を目当てに、全国からファンが集まる

「森家」の土蔵群の一角、旧北国街道沿いに全国からファンが訪れる酒屋があります。「酒商 田尻本店」の店内には年間を通して室温を13度に保ったセラーがあり、棚には富山の蔵元の日本酒を中心にワインや焼酎などたくさんのお酒を揃えています。特に熟成酒が豊富にあるのが特徴で、岩瀬で醸された大吟醸は30年も前のものから新酒までズラリと並んでいます。熟成することで、日本酒は味や香り、色合い、価値が変わります。古いお酒の持つ魅力に触れてみましょう。

岩瀬で水揚げされた自慢の幸「シロエビ」を味わう

世界で富山湾でのみ漁獲されるシロエビは、富山を訪れた際に必ず味わってほしいグルメのひとつです。富山湾でもシロエビの水揚げをしているのは、岩瀬、新湊、水橋の3ヵ所しかありません。岩瀬には漁師の方が経営するカフェ『GAREGARE』があり、淡いピンク色をしたシロエビのむき身を、ひつまぶしのように提供しています。ほかにもシロエビのかき揚げを挟んだバーガーもあります。通年で提供していますが、売り切れの場合もあるので来店の際は予約がおすすめです。

散策の途中に、お土産選びを楽しむ

旧北国街道沿いには、お土産店や和菓子店もあります。魚問屋が営む『つりや 東岩瀬』は、昭和初期ごろまで診療所として使われていました。店内では富山の魚食文化を普段の食卓に気軽に取り入れられるオイル漬け燻製、素干しなどの保存食、富山の郷土料理である昆布締めなどを扱っています。クール便での発送対応もしてもらえるので安心です。また和菓子店の『大塚屋』で人気なのが、岩瀬名物の三角どらやき。富山湾の荒波をイメージした形だそうで、生地にたっぷりの粒餡が包まれています。散策途中のおやつにもおすすめですよ。

富山市北部にある岩瀬エリアは、路面電車や富岩水上ラインといった富山ならではの乗り物を楽しみながらアクセスできます。路面電車の岩瀬浜駅や富岩水上ラインの到着場所のすぐ側にある「岩瀬カナル会館」では、岩瀬の観光マップを配布しているとともに、レンタサイクル(1日100円)も行っていて、大町通りへの散策の拠点にするのもおすすめです。気の向くままに、のんびりと岩瀬を散策しましょう。

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岩瀬おさんぽフリーチケット

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