獅子舞の里・富山で、地域ならでは伝統文化に触れる-1

全国屈指の継承数、獅子舞の里・富山

全国でも屈指の獅子舞の継承数を誇る富山県。
現在でも県内各地に1,000件以上の獅子舞が伝えられています。富山の獅子舞は、ほとんどが江戸末期から明治期にかけて根付いたもので、地域の繁栄や五穀豊穣を祈り、地元の人たちが担い手となり受け継がれてきました。

春祭りや秋祭りで舞われることが多く、地域ごとにルーツや形態、見どころもさまざまです。シーズンに各地で見比べながら、地域ごとの伝統と文化の魅力に触れましょう。

富山の獅子舞の特徴とは


富山の獅子舞は大きく2つに分かれ、県東部は「二人立ち獅子」、県西部は「百足獅子」が多いのが特徴です。県内の獅子舞は、すべて伎楽・舞楽の流れをくむ獅子舞ですが、「百足獅子」は富山、石川を中心に全国的に見ても特異な発展を遂げたものです。

この2つ以外にも、神輿の先導を務める「行道の獅子」があります。下村加茂神社のやんさんま神幸式、立山町浦田山王社の獅子舞、魚津の小川寺白山社の祭礼などが「行道獅子」にあたります。

獅子舞の見どころ


富山県内でも地域ごとに多様な発展を遂げている獅子舞は、獅子頭はもちろん、獅子方の人数や動きのダイナミックさ、採り物で手にする道具など見どころが満載です。
鑑賞するときに、チェックしてほしいポイントをご紹介します。
 

  • 獅子頭(ししがしら)

    獅子頭(ししがしら)

    立方体の形をした一般的な獅子頭と、長い箱状の箱獅子があります。

  • 胴幕(かや)

    胴幕(かや)

    彩り豊かな模様が染め抜かれた獅子の胴体にかかる幕のことです。

  • 獅子方(ししかた)

    獅子方(ししかた)

    獅子頭や胴幕を操っています。

  • 獅子あやし

    獅子あやし

    キンゾウ、サンバサ、オドリコ、ササラ、テングなどいろんな種類が存在します。被りものは花笠や烏帽子、着物は武者姿や水干姿などさまざまです。

  • 採り物(とりもの)

    採り物(とりもの)

    獅子あやしが獅子に使う道具です。

  • 獅子ごろし

    獅子ごろし

    獅子を成敗するのではなく、獅子に宿った災厄を祓うために舞います。演目の最後を飾る見応えのある舞が行われます。


【二人立ち獅子】
a. 笹川の獅子舞(朝日町)
b. 椚山の獅子舞(入善町)


【百足獅子】
c. 六渡寺の獅子舞(射水市)
d. 二口の獅子舞(射水市)
e. 十二町の獅子舞(氷見市)
f.  苗加の獅子舞(砺波市)
g. 五箇山春・秋祭り(南砺市)


【行道獅子】
h. 
小川寺白山社の祭礼(魚津市)
i.  浦田山王社の獅子舞(立山町)
j. 下村加茂神社やんさんま神幸式(射水市)

百足獅子 | 氷見獅子の魅力


胴幕の中に5〜6人が入る百足獅子で、獅子あやしは烏帽子を被り狩衣の上着に立っ付け袴姿の天狗です。採り物は竹の棒の先に紙垂(御幣)をつけています。演目はヒトアシ、フタアシ、キョウブリなど多彩で、勇壮な舞が特徴。笛のテンポが早く、大きな長太鼓を華やかに飾られた台に載せています。

十二町の獅子舞が、氷見獅子の起源と言われており、大宮(日宮社)で5地区の獅子が勢揃いして舞を奉納する総振り「じゃんかじゃんか」が行われます。
 

百足獅子 | 砺波獅子の魅力


胴幕に竹輪を入れたダイナミックな百足獅子で、砺波平野から射水南部地域に伝承されています。獅子あやしはシシトリと呼ばれる二人組の少年で、長い白鉢巻を結んでいます。

採り物は、ホウ、ナギナタ、タチなどの武具が主体。演目には緩いリズムのニラミジシ、獅子と戯れるように舞うオドリジシがあります。苗加の獅子舞は、地区に2つの獅子があり二頭が並んで苗加神社の拝殿へ進み、舞を奉納します。演目が多彩にあるのも特徴です。
 

百足獅子 | 射水獅子の魅力


氷見獅子と同じように、胴幕に竹の輪が入らない百足獅子で、獅子あやしは金蔵獅子の踊り子と同じく花笠を被った二人一組の少年が主体です。採り物は、キリコ、マサカリ、キセル、ナギナタ、タチ、カマなど。氷見獅子、砺波獅子、金蔵獅子の特徴を兼ね備えた獅子舞です。

六渡寺の獅子舞は、夜に大天狗が松明を持って獅子の相手をする「ヨソブリ」が見どころで、提灯をつけた屋台も巡航します。二口の獅子舞は、演舞のクライマックスに参道で火渡り神事が行われています。
 

二人立ち獅子 | 金蔵獅子の魅力


金蔵獅子は雌雄の二頭が一対となる二人立ち獅子で、獅子あやしは金蔵と呼ばれます。
演目はキンゾウ、ヘビジシ、キョクジシなど曲芸的な要素が強く、獅子あやしは子どもが演じ、多くの採り物も使います。獅子舞の合間には花笠を被った踊り子も舞います。飛騨から伝わったとされ、飛騨街道筋から旧大沢野町にかけては二頭型の正規のものが多く見られますが、神通川中流域の里山地域には、二人立ち一頭型の金蔵獅子もあります。

簡略化したものが富山市、立山町、砺波、南砺市利賀にも見られます。

二人立ち獅子 | 下新川獅子の魅力


伊勢神楽の影響を強く受けていると考えられている二人立ち獅子です。
基本的には胴体の中に二人の獅子方が入って獅子頭と尻尾に分かれて演じますが、後脚がなくなって一人で演じる場面もあります。獅子頭を担う人が空いた手でゴヘイやボウ、カタナ、カラカサなどの捕物を持つ場面もあります。

朝日町に継承される笹川の獅子舞は一頭の二人立ち獅子で、頭持ちは獅子頭を被り、尻尾持ちは捻った胴幕の尾を首に巻いて持っています。入善町の椚山の獅子舞には、たくさんの天狗も登場します。

 

行道獅子


獅子が神輿行列などの先導や露払い役となります。
お祓いとして参拝者の頭を噛むなどの所作はしますが、芸能めいたことは行われません。獅子頭は「箱獅子」と呼ばれ額と鼻の高さが変わらず、目や鼻が大きく平たいものが使われます。二上射水神社の築山行事、下村加茂神社やんさんま、立山町の浦田山王社の獅子舞、魚津市の小川寺の獅子舞などがあります。

浦田山王社の獅子舞は、胴幕に20人以上が入って練り歩く巨大獅子が特徴。小川寺の獅子舞は、獅子あやしと二人立ち獅子も登場する古式ゆかしい獅子舞です。

まだまだあるバラエティ豊かな獅子舞たち


 

  • 北鬼江の獅子舞【魚津市】

    北鬼江の獅子舞【魚津市】

    獅子乗り、ガチャガチャ、つんばさ、足斬り、二人舞、四人舞など、12の演目がある。現在は女性も加わって実施され、総勢10人を超えることもある。

  • 荒々しい獅子を思わせる獅子舞は全国的にも珍しい

    金山谷の獅子舞【魚津市】

    豊作を祈願する獅子舞で、力強く激しい動きが特徴。能登に発端があるとされ、勇壮な姿は荒々しい獅子を思わせる。

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  • 平安時代から続く神仏混淆のお祭り

    小川寺の獅子舞【魚津市】

    テング面とお多福面をつけた獅子あやしと二人立ちの獅子が千光寺観音堂を7周半回る。獅子舞の原初的な様相を色濃く残し、神仏混交の行事を今日に伝えている。

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  • 氣多神社春季例大祭「にらみ獅子」【高岡市】

    氣多神社春季例大祭「にらみ獅子」【高岡市】

    社殿の前で行われるにらみ獅子が特に有名。横笛や太鼓の音に合わせて、獅子が頭だけをゆっくりと左右に振り、睨んだ観客の厄を払う古式ゆかしい舞がある。

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  • 境内の三本杉の前に組まれた祭壇(築山)

    二上射水神社の築山行事【高岡市】

    二上青年団による獅子舞が行われた後、舟形の神輿などを呼び込んで神事を行い、祭儀が終わると築山は神様が怒らないよう、すぐに解体される。

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  • 高岡獅子舞大競演会

    たかまちまつり 第49回高岡獅子舞大競演会【高岡市】

    天狗と獅子による勇ましい闘いや、綺麗な音色の横笛が響く中、県内外の特色ある獅子舞を招いての競演が行われる。

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  • 鷹栖東部獅子舞【砺波市】

    鷹栖東部獅子舞【砺波市】

    重さ13キロを超える大きく黒い獅子頭で、竹を弓のように張った大きく長い胴幕が特徴の百足獅子です。

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  • 小島獅子舞【砺波市】

    小島獅子舞【砺波市】

    幕末に始められた獅子舞で、リズミカルな砺波獅子が特徴。

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  • 大きくて重い獅子頭!

    石動天神獅子舞祭【小矢部市】

    26の町内から繰り出される獅子舞が、勇壮に街中を舞い踊り、夜には町内引きが行われ、別名「獅子舞盆」とも言われている。

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Column

獅子魂HP-1

獅子魂HP

富山の伝統文化、獅子舞を世界へ。
獅子魂(シシコン)とは、この富山伝統の獅子舞文化の伝承、再生と活性化を目的としたプロジェクトです。
このHPでは富山の獅子舞文化の魅力を全国、世界に発信しております。

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富山の獅子舞の特徴や魅力をたっぷりとご紹介しました。
全国屈指の伝承数を誇る富山の獅子舞を、ぜひ見に来てください。
 

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