「かまぼこ」といえば富山!板なし昆布巻かまぼこ&細工かまぼこの魅力に迫る!
日本の食文化に根付く「かまぼこ」。全国各地でさまざまな種類のかまぼこが親しまれていますが、その中でも富山県のかまぼこは「板なし」で美しい渦巻き模様が特徴の「昆布巻かまぼこ」や、引き出物の定番「細工かまぼこ」など、他に類を見ない独自の進化を遂げてきました。
この記事では、かまぼこについての基本知識や歴史から、富山県の独自文化、工場見学・体験スポットまで幅広くご紹介します。
「かまぼこ」の基本知識と個性豊かな「かまぼこ」たち
日本の独自の食文化のひとつ「かまぼこ」は、魚の身をすりつぶしてペースト状にした「すり身」に少量の塩を加え、練り上げてから成形し、蒸したり、焼いたり、揚げたり、茹でたりして加熱することで作られる食品です。魚肉のタンパク質が塩によって溶け出し、それが加熱されることで網目状に絡み合い、特有のプリプリとした弾力が生まれます。
美味しさはもちろんのこと栄養面でも良質なタンパク質を豊富に含み、低脂肪・低カロリーというヘルシーさも相まって、私たちの食卓に欠かせない存在となっています。
日本全国には、その土地の気候や食材、食文化に合わせて独自の進化を遂げた、さまざまなかまぼこが存在しています。
しかし、多くの人が「かまぼこ」と聞いて思い浮かべるのは、すり身が木の板に乗せられた「板付き」ではないでしょうか。
これは、神奈川県の小田原かまぼこに代表されるように、全国的に広く普及している一般的なスタイルです。
全国(特に東日本)
【板付き/板無し】板付きが主流
【主な色】白、赤
【主な形】半月形
【主な材料 (魚種)】スケトウダラ、グチ、エソなど
【特徴・備考】最も一般的で、「かまぼこ」と聞いてイメージされることが多いです。板に身を盛り付けて蒸し、弾力のある食感が特徴です。
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東北地方(特に宮城県)
【板付き/板無し】板無し
【主な色】白
【主な形】笹の葉形
【主な材料 (魚種)】スケトウダラ、イトヨリダイなど
【特徴・備考】「笹かまぼこ」と呼ばれ、焼いて香ばしく仕上げるのが特徴です。弾力がありつつも、しなやかな食感を楽しめます。 -
富山県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】白、赤、青など多色
【主な形】昆布巻き、鯛、鶴亀、松竹梅など様々
【主な材料 (魚種)】スケトウダラ、グチ、エソなど
【特徴・備考】「細工かまぼこ」や「昆布巻かまぼこ」が有名です。鯛や鶴、亀など縁起物をかたどったかまぼこが、お祝い事によく用いられます。
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静岡県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】灰色がかった白(黒はんぺん)
【主な形】半月形、D字型(黒はんぺん)
【主な材料 (魚種)】サバやイワシ、アジなど
【特徴・備考】はんぺんといえば「黒はんぺん」が特に有名で、魚の骨や皮を丸ごと練り込んでいるため独特の風味と食感があります。
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愛媛県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】灰色(じゃこ天)
【主な形】小判形(じゃこ天)
【主な材料 (魚種)】ホタルジャコ(ハランボ)など小魚
【特徴・備考】「じゃこ天」が有名です。小魚を骨ごとすりつぶして揚げるため、独特の風味と食感があります。 -
広島県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】きつね色(がんす)
【主な形】長方形(がんす)
【主な材料 (魚種)】白身魚、イワシなど
【特徴・備考】「がんす」が有名で、揚げかまぼこの一種です。ピリ辛の味付けが特徴で、呉市を中心に食べられています。 -
長崎県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】きつね色(揚げ製品)、白(蒸し製品)
【主な形】棒状、丸型など様々
【主な材料 (魚種)】イトヨリダイ、グチ、アジなど
【特徴・備考】「ハトシ」のように食パンで魚のすり身を挟んで揚げた練り製品もあります。「長崎おでん」の種としても親しまれています。 -
鹿児島県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】茶色(揚げ色)
【主な形】平たい円盤状、棒状など
【主な材料 (魚種)】エソ、グチ、ハモ、アジ、サバ、イワシなど
【特徴・備考】「つけあげ」と呼ばれる揚げかまぼこが主流です。魚の旨味が凝縮されており、そのままでも美味しくいただけます。 -
沖縄県
【板付き/板無し】板無し
【主な色】茶色(揚げ色)
【主な形】平たい円盤状、厚みがある
【主な材料 (魚種)】スケソウダラ、イトヨリダイ、グルクンなど
【特徴・備考】「チキアギー」と呼ばれる揚げかまぼこが一般的で、やや甘めの味付けが特徴です。沖縄そばの具材やおやつとしても人気があります。
時を超えて愛される「かまぼこ」の平安時代から現代までの軌跡
日本の食卓に欠かせない「かまぼこ」は、そのルーツをはるか平安時代にまで遡ります。
文献に初めて登場するのは、1115年に編纂された「類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)」という古文書で、当時の関白右大臣の祝宴の品目として「蒲鉾」の名が記されています。
この1115年に初めて歴史に登場したことにちなんで、11月15日は「かまぼこの日」に制定されています。
画像提供:東京国立博物館 デジタル研究アーカイブズ
室町時代になると、魚のすり身を板の上に乗せて焼く「板かまぼこ」が登場します。そして、江戸時代後半には、今に続く「蒸し」でつくるかまぼこが一般化していきました。板は、すり身の成形を助けるだけでなく、加熱工程での移動を容易にし、さらには水分調整の役割も果たすことから、かまぼこ製造において重要な役割を担っています。
かまぼこはこの頃までは、武士の膳に供される縁起物、貴重な高級食材として扱われ、庶民が日常的に口にするものではありませんでしたが、芝居の幕間に食べられた幕の内弁当の副菜としてかまぼこが使われるなど、庶民にも少しずつ親しまれるようになります。
明治時代に入ると、輸送技術や保存技術の発展、そして食生活の変化に伴い、かまぼこも多様化し、全国各地でその土地ならではの特色あるかまぼこが作られるようになります。
大正から昭和前期にかけて、ようやく一般大衆の食卓にも並ぶ身近な惣菜として市民権を得るようになり、現代では日々の食事から特別な席まで、幅広く活躍する食品となっています。
かまぼこの栄養と健康効果、さらに体にうれしい富山の「かまぼこ」
この伝統の味が、実は現代人が求める理想的な「ヘルシー食品」であり、「食べるスーパーフード」だということをご存知でしょうか?
かまぼこの主原料は、トビウオ、カマス、タチウオ、ニギス、スケトウダラなどの白身魚のすり身です。これらの魚から作られるかまぼこは、まさに良質なたんぱく質の塊!私たちの健康に欠かせない約20種類のアミノ酸のうち、体内で作ることができない「必須アミノ酸」をバランス良く豊富に含んでいます。
また、原料の魚に含まれるカルシウムやビタミンB群に加え、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった健康に良い脂肪酸も含まれています。これらは、血液をサラサラにする効果や脳の活性化に役立つとされ、体内に脂肪が蓄積されにくいという特徴もあります。
さらに、富山名物の昆布巻かまぼこに巻かれた昆布には、ミネラルや食物繊維がたっぷり含まれており、うま味成分が味わいを深めるだけでなく、腸内環境の改善や生活習慣病予防にも役立つとされています。
※地域ブランドとして「富山名産昆布巻かまぼこ」は特許庁に商標登録されています。
低カロリーで高たんぱく、脂質が少ないのもかまぼこの大きな魅力です。ダイエット中でも手軽にたんぱく質を摂れる食品として、毎日の食卓やお弁当、酒の肴としても幅広く親しまれています。
富山の「かまぼこ」が全国で注目される理由
富山で花開いた独自の「巻きかまぼこ」文化の誕生
日本全国で板かまぼこが普及する中、富山県では他に類を見ないかまぼこ文化が発展しました。その背景には「北前船」の存在があります。江戸時代、富山は北海道から大阪・薩摩へ物資を運ぶ北前船の主要な中継地で、北海道産昆布が大量に入ってきました。富山の先人たちは、この身近で豊富な昆布を、板の代わりに魚のすり身を巻く材料として活用する発想に至ったのです。これが、富山の「巻きかまぼこ」の起源です。
昆布で巻くことで、すり身に昆布の旨みが均等に行き渡り、見た目も美しくなるという一石二鳥の発見でした。この「昆布巻かまぼこ」は当初、富山藩主への献上品として扱われる高級品でした。その後、昆布の代わりに赤や青に色づけした薄いすり身で巻く「巻きかまぼこ(特に赤巻き)」が誕生し、富山の食卓に深く浸透します。
Column
6月9日は「巻きかまぼこの日」
富山県蒲鉾水産加工業協同組合青年部 蒲友会(ほうゆうかい)では、6と9がぐるぐるとした「巻きかまぼこ」の形に似ていることから、6月9日を「巻きかまぼこの日」と定め、魚津市立道下小学校において食育の授業を行い、給食で巻きかまぼこの天ぷらを提供するなど、「巻きかまぼこ」の普及活動を行っています!
「お福分け」文化が生んだ引き出物の定番「細工かまぼこ」
富山のかまぼこを紹介するのに欠かせないもう一つの独自文化が「細工かまぼこ」です。こちらは鯛や鶴亀、松竹梅といったおめでたい形に色づけしたすり身を精巧に成形したもので、お祝い事や結婚式の引き出物として定番となっています。
富山でこのような文化が発展した理由は、「お福分け」という風習と深く結びついています。
婚礼などの慶事で、祝宴の料理を親戚やご近所に切り分けて配る習慣があり、縁起物の鯛が足りない時に、日持ちがして切り分けやすいかまぼこが引き出物として代用されていました。
富山湾と立山連峰が育む、かまぼこ材料としての地の利
富山のかまぼこの主な原料は、「天然のいけす」と称される富山湾で季節を問わず豊富に漁獲されるトビウオ、カマス、タチウオ、ニギス、スケトウダラなど、多種多様な白身魚でした。
魚種、質、量のいずれにおいても恵まれた環境であったからこそ、富山独自の味わい豊かなかまぼこが育まれたと言えるでしょう。
また、弾力のあるかまぼこを生み出すためには、立山連峰が育む地下水も重要な役割を果たしています。近年では水産資源の変化や冷凍技術の発展により、国内外の多様な魚種の冷凍すり身が使用されるようになりましたが、昆布で旨みを引き出し、彩りを添える富山独自の「かまぼこ文化」は、今後も世界から注目され続けることでしょう。
Column
駅そばから居酒屋まで、現地で味わう富山のかまぼこ
富山では、駅の立ち食いうどんから老舗のそば屋、さらには本格的なラーメン店、煮込みうどんに至るまで、多くの麺類に定番の「赤巻き」がトッピングされているのを目にします。
そして、夜の居酒屋メニューには、お酒の肴としてぴったりの「かまぼこ」が並びます。そのままわさび醤油でシンプルに味わうのもよし、おでんの具材としても親しまれています。
お土産はもちろん、現地でもその美味しさを堪能してみてください。
富山県のかまぼこ工場見学・体験スポット
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梅かまミュージアム U-mei館
もっと見る富山市にある体験型ミュージアムです。最大の魅力は7色のすり身を使ってオリジナル細工かまぼこを作れる体験。白いかまぼこの土台に色とりどりのすり身をしぼり出し、自分だけの模様を描いて作った蒸したてアツアツのかまぼこをその場で味わえます。富山の結婚式で使われる鯛や鶴亀など、伝統的な細工かまぼこの製造工程も見学できます。
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尾崎かまぼこ館
もっと見る魚津市にある、かまぼこの歴史から製造技術まで学べる施設で、ガラス越しの工場見学では職人による細工かまぼこの実演を間近で見ることができます。10人未満なら予約不要で見学可能、10人以上は予約制で係員による詳しい解説付きコースが利用できます。豊富な種類のかまぼこが並ぶ売店では、試食をしながらゆっくりと買い物を楽しめます。
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生地蒲鉾有限会社
もっと見る名水の里として知られる黒部市生地にある、1927年(昭和2年)創業の老舗「生地蒲鉾有限会社」。アットホームな家族経営の工場で、小さな鯛のかまぼこに絵付けを行う体験(要予約)ができます。黒部の名水で練り上げた、きめ細やかで弾力のある生地かまぼこや、昆布巻蒲鉾、白えび蒲鉾など、地元ならではの味も好評です。
Column
職人の技に挑戦!「かまぼこ」作り体験
白いかまぼこ土台にカラフルなすり身で模様を描く「かまぼこ」作り体験は、子どもから大人まで夢中になれる人気のプログラムです。職人さんの丁寧な指導のもと、伝統文化を楽しく体感!旅の思い出とともに、世界にひとつだけのお土産を手に入れられる富山ならではの体験です。
もっと見るお土産にも最適!富山のかまぼこ
富山かまぼこの定番と言えばやっぱり巻きかまぼこ。昆布はもちろん、赤や青など華やかな彩りと形状はお土産にもぴったり。
細工かまぼこもお土産に買いやすいコンパクトなものもあり、鯛などの縁起物から、子供が喜びそうな花や果物、新幹線の形をしたものなど、送る相手に合ったものを探す楽しさもあります。
冷蔵保存で10日〜2週間ほど日持ちするものが多く、保冷バッグを使えばお土産にも安心です。
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巻きかまぼこ
もっと見る昆布や赤や青に色付けした薄いすり身で巻く「巻きかまぼこ」。断面が鳴門巻きのように渦を巻く富山のお土産の定番です。富山県内では、赤と青の色巻きと昆布巻きの三色が並んで販売される光景がよく見られます。
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細工かまぼこ
もっと見る鯛などの縁起物から、子供が喜びそうな花や果物、新幹線の形をしたものなど、お土産に買いやすいコンパクトなものもあります。送る相手を思い浮かべながら、ぴったりの細工かまぼこを探す楽しさもあります。
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鮨蒲
もっと見る酢飯に見立てた上質な白身魚のかまぼこの上に、紅鮭、甘エビ、ブリ、アワビなど新鮮な寿司ネタが乗り、職人が一本一本丁寧に仕上げた「鮨蒲」。魚の旨味と素材の彩りが楽しめる、贈り物にも喜ばれる逸品です。
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福わけ鯛
もっと見る富山の伝統的な細工かまぼこを手軽に楽しめる縁起の良い一品です。鯛の形をした小ぶりサイズで、華やかな見た目と上品な味わいが魅力。お祝い事やお土産にもぴったりで、幸せを「おすそ分け」する気持ちが込められています。
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棒S(ボウズ)シリーズ
もっと見るスティックタイプのかまぼこで、チーズや黒こしょう、唐辛子など多彩なフレーバーが楽しめ、ワインやビールのお供にもぴったり。スリムでスタイリッシュなパッケージはお土産にも好評な新感覚のかまぼこです。
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練り物揚げ
もっと見る「半熟卵のふわ天」「黒部産ネギと紅しょうがのふわ天」「黒部ハトシ」など、最高級のすり身を使用したふわふわ食感の練り物揚げ。黒部の老舗かまぼこメーカーが、県内初の取り組みとして始めた練り物揚げ専門店「練り天屋」で販売しています。
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はべん
もっと見る旨味をギュッと詰め込んだ食べきりサイズの小さなかまぼこ「はべん」。定番の赤巻、昆布巻だけでなく、チーズ入りや燻製、白エビ、サーモン、ブリなどの魚と合わせたかまぼこなど、選んで楽しい9種類を展開しています。
Column
駅・空港・SAでも!富山の味を持ち帰ろう!
富山でお土産にかまぼこを買いたいなら、空港や駅、サービスエリア、地元スーパーなど、さまざまな場所で手に入ります。特におすすめは、富山駅構内の商業施設「きときと市場とやマルシェ」。ここには、「梅かま」や「河内屋」、「女傳蒲鉾」など、富山を代表する名店が出店しています。旅の締めくくりにぜひ立ち寄ってみてください。
もっと見るふるさと納税の返礼品でかまぼこも!
黒部市、氷見市、魚津市などのふるさと納税では、さまざまなかまぼこセットが返礼品として用意されています。数種類を食べ比べできるものや、地酒とセットになったもの、定期便などもあり、富山観光のあとには、ぜひ日常の食卓の定番としてかまぼこを楽しんでみてはいかがでしょうか?
富山のかまぼこMAP
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