宿場町を灯りが彩る「なめりかわランタンまつり」
なめりかわランタンまつり実行委員長 下村 克巳さん-1

宿場町を灯りが彩る「なめりかわランタンまつり」
なめりかわランタンまつり実行委員長 下村 克巳さん

富山県東部、古くは北陸街道の宿場町として栄えた滑川市(なめりかわし)。
その面影を残す瀬羽町(せわまち)で、2010年から毎年8月に「ベトナム・ランタンまつり」が開催されてきました。2023年からは、名称を「なめりかわランタンまつり」に変え、より普遍的で、市民のみなさんに親しまれる祭りに進化しています。

今回は、2017年から実行委員長を務める、企業経営者でもある下村克巳さんに、これまでの活動と今後の展望について、お話をうかがいます。

運命的なベトナムとの繋がり


きっかけは、当時、文化財の登録申請を手伝っていた滑川市観光協会の広橋和親(かずちか)さんのもとに、ベトナムのホテルに勤める富山県出身の女性から、ベトナムフェアの申し出があったことでした。そして広橋さんは、ここで意外なつながりを発見します。

滑川と言えば、有名なのがホタルイカ漁。そのホタルイカは“竜宮の使者”とも呼ばれます。
いろいろと調べる中で、浦島伝説の竜宮が、ベトナムの古都ユエ(フエ)なのではないかという一説があることを知ります。
さらに世界遺産ホイアンの街並みは日本の町家造りのように、通りに面した間口は狭く奥行きがあり、どことなく瀬羽町と雰囲気が似ていることも、不思議な縁を感じさせました。ベトナムのランタンが、異国の宿場回廊にしっくりなじんだのは、もしかすると運命だったのかもしれません。
 

コロナ禍をどう乗り越えたのか


幻想的なライトアップはもちろん、アオザイのレンタルや、ベトナム料理の提供、ワークショップ、雑貨販売などで、毎年集客を伸ばしてきた中、新型コロナウイルスが流行します。重苦しい自粛ムードが漂い、開催自体を取りやめるイベントもありましたが、ランタンまつりは、写真撮影を有料の事前予約制とし、滑川市在中のベトナム人にベトナム料理の作り方を教わる動画を配信するなど、人が集中しないよう工夫し、開催することにしました。

さらに国内外6カ所をオンラインで繋ぎ、市内はもちろん、ハノイやホーチミン、また横浜からは、竹を組んだベトナムの民族楽器トルンの奏者、小栗久美子さんの生演奏を届けるなど、形を変えた交流が広がり、好評を得ました。ITを本業とする下村さんの手腕が生かされたイベントでもありました。
 

ITを地域に生かして笑顔を増やしたい


下村さんは、滑川市内で『笑農和(えのわ)』という、農業とテクノロジーを組み合わせた新分野の会社の代表取締役を務めています。農家に生まれ、富山の風土も、仲間も大好きなのに、なかなか魅力を発信し、豊かになれないことへのジレンマを一時期は抱えていたそうです。

IT企業でシステム開発に携わった経験を生かし、2013年に起業。
自らのルーツである農業にITを生かし、負担の大きい水管理の省力化を図るなどの実証実験は、農業のDX化を推進する国の指針にも合致しました。現在は、県内はもとより、三期作ができるベトナムの米作りにも活用され始めています。

笑顔で和やかに農作業を楽しむ人の輪を広げたいという信念は、実行委員長を務めるランタンまつりにも共通するところがあり、下村さんの人柄が伝わってきます。

 

気づきを進化に


コロナ禍に試験的に取り組んだ写真撮影の有料化は、「お金を払ってでも美しい写真を撮ったり、その場の雰囲気をゆっくり楽しみたい人が多い」という気づきをもたらしました。

そして、数百円であっても対価をもらうことにより運営側にも良い緊張感が生まれることから、このシステムは引き継がれることになります。また混雑を緩和し、訪れた人の満足度を上げるためサテライト会場を数カ所に設け、よりスムーズで快適に楽しめる動線を意識した構成に変更しました。その結果、瀬羽町エリアに店を構えるおしゃれなカフェや古本屋などにお客さんが入るようになり、より広範囲を回遊してもらえるようになりました。

 

これからのランタンまつり


滑川は、青白く光る「ホタルイカ」や、『ほたるいかミュージアム』周辺の海岸で行われる国指定重要無形民俗文化財「ネブタ流し」の火など、光に縁が深い土地です。そこに、ランタンまつりが加わり、「いつか各家庭でもちょうちんなど何かしらの明かりをともしてくれるようなイベントになったら最高だなと思います」と、下村さん。

海上花火が見どころの「ふるさと龍宮まつり」とのコラボレーションなど、夢は広がります。これからも、チャレンジ精神とサービス精神を忘れず、進化していく「なめりかわランタンまつり」です。

Column

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