【体験レポ】my route「とやま1日乗り放題きっぷ」で巡る、高岡発・射水経由・南富山行き、“鉄分”多めの渋い旅路

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土日祝日限定で1,000円。富山市・高岡市・射水(いみず)市の主な路面電車やバス、鉄道などが乗り放題の「とやま一日乗り放題きっぷ」。富山観光をより深く楽しむために覚えておきたい一枚だ。
今回は、新高岡駅を起点に、路線バスと万葉線を利用して射水(いみず)市に向かい、港町に根付く食を満喫。その後はバスと鉄道を乗り継いで富山駅へ。鉄道グッズをのぞいたのち、路面電車で昭和レトロな残り香が漂う南富山駅へと至った。
乗り物ファンの胸に届け――。そんな思いを込めて、鉄分多めで“いぶし銀”な旅路をつづっていく。

【プロローグ】1,000円で手に入れる、富山の「鉄分」と「ノスタルジー」

旅の振り出しは北陸新幹線・新高岡駅から。事前に「my route」アプリから購入した「とやま1日乗り放題きっぷ」をスマホに入れ、路線バスに揺られて高岡駅へ向かう。
きっぷの利用は簡単で、降車の際、乗務員に画面を提示するだけだ。

【高岡駅~米島口】万葉線の走行音と、1997年の淡い記憶

高岡駅南口で降り、連絡通路を抜けて路面電車・万葉線の乗り場へ。年季をまとった列車のフォルムに郷愁を覚えつつタラップを上がると、車内には射水市出身の落語家・立川志の輔氏のアナウンスが流れていた。宇奈月(うなづき)温泉の黒部峡谷トロッコ電車内で耳にした俳優・室井滋氏の案内を思い出す。地元ゆかりの著名人による演出は、旅の情緒をいっそう色濃くする。
電車は機械の動力をむき出しにしたような野太い音を響かせて走り出す。高岡の中心部を進むうちに、筆者の意識はかつての記憶へと沈んでいった。
 

万葉線が米島(よねじま)方向へ舵を切る。あの風景が目に飛び込んできた瞬間、学生時代、かつてこの地域にあった「ピカデリー」という映画館へ行った日の出来事が、ふっと蘇った。
それは1997年の夏。
大学進学で離ればなれになった、当時の彼女との久しぶりのデートだった。
彼女がリクエストしたのは、その頃としてはマニアックなインド映画。県内で上映していたのは「ピカデリー」だけだった。運転免許を持たなかった二人は、万葉線に乗って映画館へ向かった。
恋愛映画はデートの鉄板だが、自分はどうにもその独特な世界観に入り込めない。ラストシーンでは、思わず含み笑いすら浮かべた。「こんなのウケるわ」と声を掛けようと隣を見ると、そこには号泣する彼女の姿。帰りの車内、映画を絶賛する彼女に気圧され、本意ではない相槌を打ったあの日。今も変わらぬ線路の上を走る電車だけが、あの頃と同じ音を立てていた。

【万葉線本社】時を止めた展示品と、新たな縁。オリジナルグッズに触れるひととき

ほろ苦い記憶に浸るうち、電車は米島口に到着した。ここに万葉線の本社と車両基地がある。本社には万葉線ゆかりのグッズが販売されており、年末年始以外、土日祝日も営業している。中に入ると、昭和時代に使用されていたような切符などが展示されており、懐かしみを感じて目尻が下がる。万葉線車両の玩具や文房具、Tシャツ、靴下など様々な品が並ぶ。

中でも、キャラクターコンテンツ「鉄道むすめ」に登場する、万葉線の運転士をモチーフにした「吉久(よしひさ)こしの」に目が留まった。写真撮影用の立て看板もあり、その人気ぶりがうかがえる。いわゆる“萌え”系アニメには疎い筆者であったが、これも何かの縁と思い、メモ帳を購入し万葉線本社を後にした。

【米島口~新湊地区】「ドラえもんトラム」大人も心躍る夢の車両

米島口駅からは再び万葉線に乗って射水市の新湊(しんみなと)地区へ。乗車したのは高岡市出身のまんが家、藤子・F・不二雄氏の代表的キャラクターをあしらった「ドラえもんトラム」。親子連れを中心に大人気の車両だ。

どこでもドアを模した乗車口から足を踏み入れると、車両の両端には出迎えるかのようにドラえもんのぬいぐるみが置かれている。
 

天井を見上げると、青空を背景にキャラクターたちがひみつ道具の「タケコプター」を付けて飛ぶ姿。壁面には「暗記パン」などのひみつ道具が配され、窓にもドラえもんやのび太たちが。至るところに散りばめられたイラストの数々は、ファンにはたまらない夢の空間だ。
射水市までの道中、少年時代のようなひとときをドラえもんと過ごした。

【ご当地グルメ】港町で味わう、富山のソウルフード「かけ中」

射水市に入り、「第一イン新湊クロスベイ前」の停留所で降りると、時計の針は正午近くを指していた。昼食は同市の交流拠点である「クロスベイ新湊」内のレストラン「ダービー」に決める。看板に掲げられたメニューの「かけ中(ちゅう)ランチ」に目を奪われたのだ。
「かけ中」とは、うどんの出汁に中華そばを入れ、赤巻きカマボコととろろ昆布を添えた、いかにも富山らしい一品。あっさりとした出汁の味わいと、ちゅるっとしたラーメン本来ののどごしが持ち味で、港町の地元で親しまれている。「ダービー」のランチセットは、昆布おにぎりと小鉢がついて750円という手ごろさも魅力だ。勢いよく麺をすすり、おにぎりにかぶりつく。寒さと移動で疲れた身体に、じんわりと温もりが広がった。

【必食スイーツ】ふわふわシフォンケーキをデザートに

食後、バスの時間まで散策しようと周りをぶらついていると、可愛らしいキャラクターが描かれた黄色い看板が目に入った。焼き菓子店「I COOWL STUDIO(アイコール・スタジオ)」で、デザートにちょうどいいと思い、入店した。
同店は高岡市で開業し、射水市に移転して3年ほど経つ。色鮮やかにキャラクターを描いた焼き菓子のアイシングクッキーが自慢で、シフォンケーキも人気を集めている。
 

早速、イチゴやキウィ、オレンジなどが彩りよく並ぶシフォンサンドと、お土産用に米粉シフォンケーキを買い求めた。
シフォンサンドを口にする。ふんわりとした生地に、みずみずしいフルーツの食感が重なる。さらにサンドの中のクリームに仕込まれたバナナが味に深みを添える。気づけば、あっという間に平らげていた。

【新湊地区~小杉駅】旧5市町村の面影を辿る。コミュニティバスでゆく射水縦断の車窓

腹ごしらえを済ませ、クロスベイ新湊からコミュニティバスに乗り、あいの風富山鉄道小杉駅へ向かう。10人ほどが乗れる小ぶりな車体は、住民生活を支える足として、住宅地や病院を巡りながら進んでいく。
普段、自分ではまず通らない道をゆく車窓を眺めていると、射水市が新湊市と周辺4町村(小杉町・大島町・大門町、下村)の合併で誕生したまちであることを思い起こした。
やがて旧国道8号線に出て小杉駅に向かう。バイバス道路ができる前までは、かつて何度も通った道だ。懐かしさが胸に広がるうちに、バスは静かに駅へと到着した。

【小杉駅~富山駅】あいの風に吹かれて。旅の記憶を形にする、小さな「鉄分」探し

小杉駅からあいの風とやま鉄道に乗って富山駅へ。土曜日とあって、車内は学生らを中心とする若い世代でほぼ満員だ。つり革につかまり、しばし揺られる。
 

あいの風とやま鉄道改札口近くにある富山駅構内のコンビニエンスストアでは、同鉄道のグッズが販売されている。マスコットキャラクターの「あいの助」のぬいぐるみストラップやキーホルダーなどがそろい、土産にも良さそうだ。

さらに鉄道のお土産を見ようと、富山駅に隣接する電鉄富山駅の売店へ立ち寄る。電飾看板に掲げられた「おみやげ」の字体が昭和の雰囲気を漂わせ、なんとも味わい深い。路面電車のチョロQや駅名板をモチーフにしたキーホルダー、ヘッドマークの缶バッジなどマニアにはたまらない品々が置かれている。
 

店員におすすめを聞くと、稲荷町駅にある車両基地で撮影した列車のクリアファイルだという。富山県民のなじみ深い緑と黄色の“かぼちゃ列車”に、京阪電鉄と西武鉄道の車両が並ぶ様子は中々見られないものだそうで、“撮り鉄”からも評価が高いらしい。説明を聞くうちに心が動き、知らぬ間に財布のひももゆるみ、そのファイルを手にしていた。

【富山駅~南富山駅】昭和の香りを求めて、旅の終着地へ

旅路の最後は、路面電車に揺られて南富山駅へ。同駅は筆者の自宅の最寄り駅で、ここを走る電車には昔から親しんできた。車両は中心部を抜け、ガタンコトンと聴き慣れた音を響かせながら進む。
 

到着後、曇天の空模様も手伝って渋さがいっそう際立つ駅舎と、南富山駅商店街を歩いた。商店街には学生時代によく通ったCD・レコード店「サウス・ストリート」がある。1970年代生まれの筆者にとって、この店の電飾看板は今も胸に響く存在だ。

最後に車両基地で電車がずらり並ぶ様子を収め、いぶし銀の旅を締めくくった。

Column

サブカルチャー好きに染みる富山市のレコード巡り旅-1

サブカルチャー好きに染みる富山市のレコード巡り旅

本文で触れている「サウス・ストリート」をはじめとした富山市のレコード店を巡り、「ディグ」る旅をつづった記事はこちらから。

富山市でレコード巡り。レトロな名店と海鮮グルメで栄養120%の「ディグ」な旅

【エピローグ】「いぶし銀」な旅を終えて。コスパ最強の休日

今回の旅では、バスに2回、電車に4回乗車。本来1530円かかるところが1000円で済むのは、実にお値打ちだ。さらに射水市では、このチケットで電気で走る3輪自動車「べいぐるん」に乗り、ベイエリアを巡れる(事前予約が必要)。休日の富山を楽しむなら、ぜひ押さえておきたい一枚である。

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