富山県内最大級の「ひまわり畑」笑顔咲く農作地へ!亡き子に捧ぐ父の想い【富山市婦中町】

  • ひまわり畑の画像1(大場さん提供)

    ひまわり畑の画像1(大場さん提供)

富山市の婦中町長沢(ふちゅうまちながさわ)に2022年夏から、県内最大規模のひまわり畑が出現し、真っ黄色に咲き誇る風景が多くの人を魅了している。入場料は基本的に無料で、栽培費用のほとんどはオーナーがまかなう。手弁当で畑を続ける理由には、難病により幼くして急逝した息子と父との心の結びつきがあった。

100万本の開花を目指し、サッカーコート2.6面分の畑を耕す大場さん

農業法人「スローライフファーム」代表取締役の大場忠勝さんは、専業農家として農作業に汗を流す。管理する農地の一つが富山市婦中町長沢にあり、2022年から同所の休耕地をひまわり畑として運用、一般に無料開放している。面積は約19,000平方メートルで、サッカーコート(平均7,140平方メートル)約2.6面分と広大だ。
ひまわり畑は、8月上旬と中旬の2度満開になるよう、土地を分けて種まきの時期をずらしている。2024年は100万本の開花を目指し、約133万粒の種と約80kgの肥料を用意した。経費のほとんどを自費でまかない、トラクターで畑を起こすなど膨大な労力と時間もかかっている。栽培はよほどの信念がなければ困難だと思われる。なぜそれほどまでに情熱を注ぐのかと問うと、
「ちょっと長話になりますが、時間大丈夫ですか」。
大場さんはこちらを気遣う素振りで、柔らかな表情をたたえながら、ひまわり畑誕生のいきさつをじっくりと語り始めた。

円満な暮らしの最中、小6の次男が白血病に冒される

大場さんは大学卒業後に民間企業で8年勤務した後、実家の農業を継いだ。家庭では妻と男兄弟2人の子どもに恵まれ、円満な暮らしを送っていた。
しかし、2018年春に突然、家族を揺るがす事態が起きる。
当時小学校6年生の次男が、鼻血を出した。今までと違って、中々血が止まらない。かかりつけ医の診察から、すぐに大学病院を紹介された。それから幾度も検査が続き、不安な毎日が過ぎていく。判明した病名は、血液のがん「白血病」だった。

「まさか。なぜうちの息子が、そんな大病に冒されなければならないのか」。
思考が止まりそうな事実を突き付けられる中、大場さんは子のために懸命に駆け回る。可能性に賭け、治療法を探り、有効な方法の一つ骨髄バンクのドナーを追い求めた。願いが通じて提供者が見つかり、骨髄移植手術の日取りも10月に決まった。
希望の光が射した―。
だが、手術の一か月前の9月、次男は数カ月の闘病の末、息を引き取った。

遺影に映るひまわり畑を休耕地で再現したい

死の悲嘆に暮れる余裕もなく、大場さんは通夜と葬儀の細かな仕切りに追われる。遺影を作らなければならない。亡くなる一年前の2017年夏、一家4人の家族旅行で訪れた山梨県北杜市明野(ほくとしあけの)のサンフラワーフェスティバルの写真。太陽の恵みをたっぷり受けて咲いたひまわり畑を背景に、次男の顔写真を組み込んだ。
葬祭を終えても、心は休まらなかった。気を抜くとどうにかなりそう、そんな気持ちをなんとか抑え、朝晩に次男の遺影を見つめてはしのぶ日々。そのうちに、遺影に映るひまわりが頭の片隅に残っていった。
一方で、仕事は新たな田畑を耕作するなど拡大しており、喪失感を埋めるかのごとく精を出していた。2021年に受け持った婦中町の土地の一部を、調整のため休耕地にする際、大場さんはふと思いつく。
(休耕地を、次男の遺影のようなひまわり畑にできないかな)。
既に次男はこの世界にはいない。実現しても見られないし、喜ぶわけではない。自己満足かもしれないけれども、父として次男への想いを現世で表現し、ずっとそばにいるように感じたい。その一心で始めようと決意した。

2022年から栽培を開始、一日200人が訪れる

2022年、初挑戦のひまわり畑は、8月に約45万本が満開となり、想いを体現した。一日約200人が来場し、子どもが畑の中で笑顔を振りまき、その姿を撮影する親の様子があちこちで見られた。

2023年、2年目のひまわり畑は、7月の豪雨で生育が阻まれて8月に満開とはならず、9月に開花した。遅咲きの分、畑の隅で咲いた彼岸花と相まって、鎮魂の情景を創り出した。
そして2024年、大場さんは例年同様6月にひまわりの種を植え、生長の様子を見守っている。

「ありがとう」周囲からの言葉が畑を続けるエネルギーに

「この畑がうまくいっても、次男を失った癒しにはつながりません。今でも悲しみは残っています」。幼い我が子を亡くした親の苦しい胸の内を、率直に明かす大場さん。
それでも、ひまわり畑の取り組みは、周りに反響を呼んでいく。
美しく黄色に染まった一帯が話題となり、見に来た人や付近の人から「作ってくれてありがとう」と感謝された。知らない人からも事務所に電話があり、謝意を伝えられた。「ひまわり畑で周りを楽しませるお父さんを、初めて尊敬した」。長男がこう言っていたのを、妻から伝え聞いた。
次男に捧げたひまわり畑は、見た人に感動を与え、巡り巡って大場さんを応援する力となっていった。

「農業は力仕事で辛い部分が多いです。でも、ひまわり畑によって『ありがとう』と言われて、自分のエネルギーになりましたし、感謝を生んだ農業の魅力を改めて感じました」と前を向く。
2024年は、駐車場を20台と広げるほか、敷地内にキッチンカーを配置し、来場者への軽食販売を展開して観光地としての魅力向上を図る。大場さんは「費用持ち出しで大変な面もありますが、少しでも補えるやり方を考えて、できる限りひまわり畑は続けていきます」と力を込め、畑に芽生えたばかりのひまわりの葉を、愛おしそうに見つめた。

ひまわり畑誕生の背景にある、親子の悲しくも温かなエピソード。富山市婦中町の肥沃(ひよく)に耕された農地で、夏の象徴は今年もきっと、太く真っ直ぐな茎を伸ばし、太陽のように花開くだろう。その風景を期待して訪れる家族連れや子どもらにも、笑顔の花が咲き誇る空間となりますように。大場さんはそんな未来を頭に描き、次男への想いを胸に溶けこませて今日もせっせと作業に励む。

【ひまわり畑周辺施設1】Uターン夫婦が営むパン店「swallow bakery」

さて、ひまわり畑を訪れた際におすすめの立ち寄りスポットを2つ紹介する。一つは、ひまわり畑から車で約1分、長沢の住宅街にあるパン店の「swallow bakery(スワローベーカリー)」。2023年に開店した同店は、京都のパン店で働いていた地元出身の店主がUターンし、地域に根差した店を目指して夫婦で始めた。

パンの生地は国産小麦100%で、毎日食べても飽きない味わいが特徴。店内はショーケースから商品を選ぶ対面式を取っており、子連れでも安心して買い物ができる。ぶどう食パンとメロンパンが人気を集め、早々に売り切れる日もある。駐車場は4台で、営業時間は9時から18時まで(売り切れ次第閉店)。定休日(水・木曜日)以外に不定休があるので、来店前に店のSNSを確認してほしい。

【ひまわり畑周辺施設2】地産の農産物や加工食品がそろう「あおばの里ほほえみ館」

もう一つは、ひまわり畑から車で約2分の国道359号線沿いにある商業施設「あおばの里ほほえみ館」だ。JAあおばが運営する同所では、地元農家が作った新鮮で安全安心な農産物や加工食品などを揃える。

キュウリやジャガイモといった野菜や、地元長沢のレンゲソウから採取したハチミツやモモ、婦中町朝日のスイカがおすすめだ。営業時間は9時から16時までで、年末年始を除き年中無休となっている。

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