富山市「スパ・アルプス」は中年のオアシス!風呂・宴会・麻雀で心身フル充電【フロメシ漫湯記2】
富山市の温浴施設「スパ・アルプス」は、近年のサウナブームに乗り、北陸地方の「ととのい」の聖地として注目されている。だが、そんな肩書きがなくとも地域の中年世代にとっては、昔からオアシス(休息の地)として根強い人気を誇る存在だ。
今回は同施設に滞在し、入浴と宴会、そして麻雀に興じながら、浸かり、打ち、飲んだ一日を記していく。
学生時代に親しんだ麻雀を、ふたたび
学生時代、暇があれば麻雀の卓を囲んだものだ。必要な4人を集めては、その中の誰かの下宿先に陣取る夜。こたつ机の上で、ジャラジャラとやかましい音を立てながら牌を混ぜ、カチカチと積み上げる。サイコロを振り、それによって定められた牌山から順にツモる。揃った手牌に一喜一憂しつつ、より早く、より強い役で上がるための一手を探る。そのひとときは、配られた運と向き合い、先を読み、決断を重ねていく、人生の縮図だった。
あれから20数年。社会人となり中年に差し掛かると、麻雀をするにも時間と参加者の確保に骨を折るようになり、次第に心も離れていった。気づけば10年以上、牌を触っていない。
そんなある日、取材ネタを周りに相談したところ、
「『フロメシ漫湯記』、次はスパ・アルプスでどうですか?サウナで人気ですし」と、あるメンバーから提案があった。
「あ、いいねえ。風呂入って、そのまま飯も食べられるし。寝る場所もあるから最高やん!」と、返すオレ。
「アルプスには麻雀室もあるので、せっかくだから麻雀できる人を集めて打ちませんか?宴会コースの夕食にすればかなりお得ですよ」と、さらに乗せられる。
「打つのは久しぶりだなあ。面白いね!それ、乗った!」
こうして、取材の相談をきっかけに麻雀大会が立ち上がり、あっという間に10名前後が集い、2卓が立つ規模となっていた。
風呂に入って、食べて飲んで、打って、休んで――6900円
スパ・アルプスは富山市中心部から少し南東に位置する。富山インターより約10分で、無料駐車場も完備。富山駅からは路線バスで約15分だ。
予約したのは、宴会プランの「居酒屋コース飲み放題付」。同施設には当日の朝4:00から翌1:00まで滞在でき、夕食と飲み放題が付いて6000円。破格と言っていい内容である。
さらに900円を追加すれば、翌1:00から11:00までの延長も可能。いわば6900円で、温浴施設の1日半に近い滞在と、夕食に酒まで付く、至れり尽くせりのプランだ。
全自動卓を備えた麻雀室の利用は無料だが、人気のため予約は必須。館内には無料休憩室に加え、有料の個室休憩室やカプセルホテルも用意されている。このほか、数千冊のマンガ本も読み放題。あかすりやエステといったリラクゼーションメニューも充実し、まさに「中年世代のオアシス」だ(※料金は取材時点のもの)。
北アルプス天然水の風呂に浸かり、サウナで汗をかく
そして取材当日。先に入浴しようと11:00過ぎに到着。ロッカーに荷物を入れ、裸一貫でいざ大浴場へ。北アルプス系の天然水を使った大浴場に身を委ねる。「水」自慢の大浴場は飲用もできるほどの水質で、透き通った湯の見た目に、柔らかい何かに包まれているような、それでいて身体がきりりと締まるような感覚を覚える。のんびりと浸かり、ほどよく温まったところで、聖地のサウナへ。
案の定、室内はサウナ客で半数以上埋められており、その中に参加メンバーの姿も。「サウナハット」を被り、最上段でチベットの修行僧のように鎮座する姿は、まさに“サウナー”。
昔からサウナは好きだが、文化的価値が高まり、独自のしきたりも増えた最近のブームには少し気おくれする。オレは入口手前に座り、軽く汗を流しただけで退散。水風呂はジャグジー風と通常の2種類あったが、“ととのい”の境地に至らず、体感せずに風呂を後にした。
まあ、1人で来た時に、じっくり追い込めばいい。今日は汗がかけただけで十分だ。
明るいうちから一杯、風呂上がりの寄り道
館内着に着替えて食堂へ。昼の食事は別料金だが、スパ・アルプスの施設をフルに楽しむには、明るいうちからの一杯は外せない。既におっ始めているメンバーに加わり、杯を交わす。風呂上がりのさっぱりとした体に、真っ昼間から生ビールを流し込む。そんな贅沢は、控えめに言って最高だ。
富山名物の「あんばやし(こんにゃくの味噌田楽)」と「イカの黒作り」をアテに、さらに酒が進んでいった。
飲み過ぎると、これからの勝負に響いてくる。最後にゲン担ぎで「カツカレー」を注文、揚げたて熱々の分厚いカツをハフハフとほおばり、大会への準備を万端にした。
10年ぶりの牌、前半戦はリハビリ麻雀
さて、麻雀室に移動。麻雀室は喫煙と禁煙の2か所に分かれている。氷河期世代のオレたちがどちらを選んだのかは、言わずもがなだ。
8人で2卓に分かれ、東風戦(各プレイヤー親が一巡したら終了)を採用、終局のたびにメンバーを入れ替えるスピーディーなルールで開始した。
昔取った杵柄、というにはあまりに心もとないレベルで、牌を持つ手もおぼつかないオレは不安を感じ、「リハビリ中なのでお手柔らかに」と前置きして対局に臨んだ。
一手一手を確かめながら打っていると、すぐさま「リーチ」の掛け声。気を引き締めて安全牌を切るが、「一発ツモ!(リーチ後の最初のツモで上がる役)」と早くも大きい役で上がられてしまう。
10年以上振りの対局は、ついていくのがやっとだ。しかし、考えながら卓に没頭すると、時の流れは驚くほど速い。13:00に開始した前半戦は、気づけば宴会開始18:00の10分前となっていた。
オレの成績は8人中6位と振るわなかったが、ひり付く場の空気と、自分の推測通りに手配が育っていく快感を取り戻し、宴会後に控える後半戦を楽しみにしつつ、席を立った。
居酒屋メニュー勢ぞろい、個室で乾杯
宴会は個室会場が用意されており、まずは瓶ビールで乾杯。居酒屋コースのメインはすき焼き鍋。ほか、揚げ物や焼き鳥、枝豆など酒の肴に打ってつけの品々が並ぶ。出来立てほかほかのじゃがバターにかぶりつき、ビールをかっ食らう。そんなたまらない一瞬から宴は始まった。
揚げ物は手羽先、アジフライ、ハムカツ、串カツ。中でもアジフライのサクサク、ふわふわとした揚げ加減がことさら嬉しい。このほか舟盛りや本格会席コースもある。酒はビールから割りものへ移り、場のあちこちで笑い声が響き渡る。充実した雰囲気で宴を終え、後半戦へ向け歩みを進めた。
ご利益画像、絶望の淵からの『親倍満』大逆転劇
勢いづいて後半戦へ突入。――と、いきたいところだったが、相変わらずオレの流れは悪いまま。高い役を振り込んでしまい、
(もうやめてくれ。モニカのライフはゼロよ…)
と、心の中で叫ぶほど、瀬戸際に追い込まれていた。
「飯を食ってもアカンわ。いや、あきらめたらそこで試合終了だ。小さなことからコツコツと!」
どうにか流れを変えたい。そんな焦りがじわじわと募る。
悲観せずに前を向こう、と、自分に言い聞かせていたその時、見学していたメンバーが、
「モニカさん、この芸能人の画像を見るとご利益あるらしいよ」
と、スマホの画面を差し出した。
それは、最近ではスピリチュアル系番組で知られ、かつては作家・三島由紀夫と深い縁のあった人物の、金髪がまばゆしい姿だった。
「どうか、頼みます。このオレに良いツモを!」
思わず手を合わせる。
すると、どうだろう。くっつかないと見切りをつけていた部分に、すっとツモった牌が入り始めた。迷わずリーチをかけると、あきらめかけた最後の局面で、劇的なツモ上がり。裏ドラも乗り、結果は親倍満という大きい役となり、ビリから一気にトップへ躍り出た。
この局はトップを維持したまま終局。さらに次の局でもその勢いは衰えず、2連続トップを勝ち取る。この爆勝ちがアドバンテージとなり、後半戦はプラス域で締めくくった。
(麻雀は10%の才能と20%の努力、そして30%の臆病さ、残る40%は……運だろうな)
どこかで聞いたそんなセリフを思い起こし、満足して休息に入った。
余韻を抱えて、朝へ
麻雀室には、まだ打ち足りないメンバーが残っていたが、オレは休憩室のリクライニングソファーで横になる。頭を使った疲れと酔いが回り、いつの間にか眠りに落ち、朝の館内放送で目覚めた。朝食は6:30から。安価で旨そうな朝食メニューに心惹かれたものの、混雑する食堂を見て、今回は見送った。
朝風呂に浸かって目覚めを確かなものとし、退店。帰り道、車内で昨日の出来事を振り返る。
(むちゃくちゃ楽しかったなあ。また打ちたいなあ…)
中年になっても、学生時代のように集まり、飲んで騒いで、牌を囲む時間は、何物にも代えがたい。その余韻を噛みしめながら、静かにアクセルを踏み込んだ。