口コミ評価4.8以上!朝日町の旅館「城山荘(しろやまそう)」で食すウチのご飯【ジモメシ放浪記1】

  • ひなびた佇まいの一方、至福の食事を味わえる城山荘

    ひなびた佇まいの一方、至福の食事を味わえる城山荘

「楽天トラベル」や「じゃらん」をはじめとしたインターネット旅行予約サイト(OTA)において、ずば抜けて口コミ評価の高い旅館が富山県朝日町にある。料理とおもてなしに定評がある宿へ実際に泊まってみた。

ジモメシの定義と今回の訪問先「城山荘(しろやまそう)」

オレは何十年も人知れず営業を続ける渋めの飲食店がすこぶる好きで、地元飯=「ジモメシ」という造語を名付け、定期的に仲間を募ってはジモメシ探訪を楽しんでいる。なぜなら、必ずと言っていいほど真心込めた美味い料理に出会えるのはもちろん、店主や常連客らとの会話で心をほぐしながらその土地の習慣や文化を知り、旅のような非日常的体験を得られるからだ。

今回は朝日町にある旅館「城山荘」を訪ねた。同旅館を知るきっかけは、職業柄インターネットで富山県内の宿泊施設を調べる日課から。県東部の宿を順々に流し見していると、昭和時代の雰囲気漂うひなびた一軒宿の画像に目が止まった。口コミ評価を見ると、主要オンライン旅行予約サイト「楽天トラベル」、「じゃらん」ともに5段階中4.8以上の評価が付けられている。「料理がとても美味しい」や「きさくな女将さんの温かなおもてなしに感動した」など、失礼ではあるが建物の雰囲気からは予想できないコメントが並ぶ。1泊夕・朝食付きの宿泊代金も手ごろで、ちょうど全国旅行支援が実施されており、通常飲み会を開く費用で宿泊できる絶好の機会であった。心の底から興味が湧きたってきたオレは、いつもの飲み友だちを誘い、一路、朝日町に向かった。

宿に到着。ノスタルジックな茶色のタイル張りの外壁が目につく。駐車してあたりを見回すと、関西など県外ナンバーの車がずらり。富山から関西までの距離と時間を考えても訪ねたい宿なのだと考え、期待がさらに高まった。

玄関の扉を開けいざ中へ。「すみませーん」と声掛けすると、女将の池田章子さんが笑みをたたえながら現れた。隣の家の人と話しているかのような気取らないやり取りに、心の故郷に帰ってきたような感覚になる。チェックインの手続きをしながら「ネットの評価が非常に高かったので気になり、利用を決めました」と伝えると、池田さんは「県外の方には珍しいかもしれませんが、食事も普通の『ウチのご飯』ですよ。逆に富山市の方の口に合うかどうか」と謙遜する。
県外客の利用が多い理由を尋ねると、朝日町のヒスイ探しや釣りを目的に来るそうだ。案内された部屋から改めて県外ナンバーの車ばかり停められている駐車場を眺め、灯台下暗し、とはこのことか、とつぶやく。部屋は年季が入っているが掃除が行き届いており快適で、友人らとともにワイワイと駄弁りながら過ごすと、あっという間に夕食の時間となった。

煌めきを放つ採れたての刺身

準備ができたと声掛けされ、いざ夕食へ。城山荘の食事は一品出しで、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに出来立ての料理が出てくる。一品出しは手間がかかり、それなりの高級旅館でしか採用されていないことは職業柄理解しており、そのサービスがおもてなしに高評価を得る理由の一つだと推測した。
ホタルイカの沖漬けとビールで軽く胃をならしていると、大きな皿に盛られた刺し身盛り合わせが運ばれてきた。甘エビ、フクラギ、マダイ、アジ、イカの5種盛りは煌めいているかような色を放ち、一目でキトキトな捌きたての品だと分かる。口に運ぶと、どれもきちっと身が締まっており、甘みや食感を存分に感じ取れる。

他のメンバーも「身がプリプリだねえ」など感想を言い合いながら酒を酌み交わす。

ここでしか食べられない宮崎漁港のモズク

続いての品はモズクの酢の物。よくスーパーで3個200円ほどで販売されているものとは違い、このモズクは一切れ一切れが太い。一口食べてみると、今までに出会ったことのないコリコリしたモズクの主張する食感に驚かされた。「こんなモズク食べたことない!」と周りも思わず口にするほどだ。噛むほどにうま味が口内に広がり、病みつきになってついつい酒も進む。

配膳の方に聞くと、このモズクは近くの宮崎漁港で採れたものを使っており、市場には出回ってないそうだ。今までのモズクのイメージが一掃されるとともに、人生40年以上過ごしてもまだまだ出会っていない食は山ほどあると気付かされた。
 

焼き物は赤魚を醤油で味付けしたもので、脂が乗っていてふっくら熱々だ。甘辛い味わいに、思わずご飯を注文し、白飯の上に魚を乗せてワシワシとかき込みたくなる衝動に駆られる。
 

餅のような粘り気 自家栽培の里いも煮物

里芋のそぼろあんかけ煮は、旅館裏の自家農園で栽培している里芋を使っており、ネットの口コミでもよく紹介されていた品だ。口に入れると里芋のものすごい粘り気を感じ取れた。餅を食べているかと思うほどの粘力で、鶏肉のそぼろ、あんかけと絡み、絶妙なハーモニーを生み出している。

そしてほくほくとした温かみ。ウチで食べる料理です、と女将さんが揶揄していたことを思い出す。いえいえ、これ、この真心が感じられる料理を求めていたんですよ、と心の内でつぶやきつつ、最高の肴を前に杯を空ける速さが増していった。

揚げ物は串カツで、串に刺すサイズではないほどの大きなヒレカツと玉ねぎが揚げたて熱々で運ばれてくる。カツのジューシーな肉汁と玉ねぎの甘みにお腹も心も満たされる。

朝日町名物のたら汁で「優勝」

最後に出て来たのは朝日町名物のたら汁。白みそのあっさりした優しい味わいとふっくらとしたタラの身、アクセントとなるネギ。アルコールで多少荒れた胃を落ち着ける風味。白ご飯と一緒に食べ進み、完食。

Z世代が最近食事の美味しさを表す際によく使う「優勝」という文言、それを年甲斐もなく声に出したくなるほど至福の夕食時間を満喫した。メンバーもみんな満たされた様子で、夕食を契機にその後の部屋宴会はさらに盛り上がったのは言うまでもない。
 

ご飯のおかわりをしたくなる朝食

楽しい夜は過ぎて翌日。半分夢の世界の面持ちで、暴飲暴食との戦いを終えた胃をさすりながら朝食会場へ。席に座ると、焼き立ての卵焼きという朝の香りでぱちっと目が覚める。卵焼きを始め、サバの塩焼き、さつま揚げと大根等の煮物、とうふとわかめのみそ汁などが出来立てのうちに次々と運ばれてくる。みそ汁を一口すすると、柔らかな味わいが酔い疲れの身体に染みわたり、食欲が沸いてくる。旅館の朝食はご飯のおかわり必須というのは私見だが、この日も例に漏れず甘めの味付けの卵焼きをおかずに1杯、サバで2杯、煮物と漬物で3杯と、炊きたてつやつやの白ご飯を存分に食べ尽くした。

一見素朴な旅館にほど、予想しないほどの出会いや楽しみが待っている。富山県の東端、朝日町で味わった海街のジモメシは、県外リピーターの多い温かな「ウチの料理」であった。

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