【日本遺産 木彫刻のまち井波】まち歩きで出会う伝統文化と井波の神秘
約250年の歴史を持つ瑞泉寺の門前町「井波(いなみ)」は多くの木彫刻と木彫刻に関わる工房が集まる日本で唯一の町。「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館 井波」として、日本遺産に認定されています。
今回私は井波を訪れ、日本遺産のスポットを巡ってきました。歴史や文化、風土を感じながら見て回るスポットは、最初から最後まで全てがクライマックス。ここ井波を訪れてこそ分かる、特別な空気感を是非感じてみてください。
八日町通り〜井波彫刻に触れる美しい町並み
井波のメイン通りは、「八日町通り」と「本町通り」。瑞泉寺の門前「八日町通り」を歩きながら瑞泉寺に向かいます。
通り沿いには木彫刻の工房や蔵元などが建ち並び、石畳で整備された道と眼前にそびえる「八乙女山(やおとめやま)」が調和して、懐かしくて温かみのある雰囲気を創り出しています。
通りの軒先に掛かる表札には干支の動物が飾られ、様々な場所にひょっこり顔を出す木彫の猫、街灯に飾られる七福神など、町の至る所に何気なく存在する木彫刻を見つけながら歩くのも楽しみの1つです。
木彫刻工房は八日町通りに点在しています。井波には現在、約200人の彫刻師が暮らし、伝統の技を受け継いでいます。工房内は気軽に入り見学ができ、町歩きの途中でふらりと立ち寄れます。彫刻師たちは、井波の伝統文化を「実際に目て見て知ってほしい」という思いを大切にしています。そのため、訪れる人を温かく迎え入れてくれます。
この日は、大きな龍の看板が目印の「木彫刻野村清宝工房」に立ち寄りました。工房に入ると、木槌と鑿(のみ)が刻む音が響き、空間には優しい木の香りが漂います。その音と香りが重なり、ここ井波でしか感じることのできない、特別な空気感をつくり出しています。
工房内に並ぶ200本以上もあるという彫刻刀。立てかけられたいくつもの欄間(らんま)。野村氏が彫る姿。道具の多様さや欄間の迫力を間近で見ることで、井波彫刻がいかに高度な技術と長い時間をかけて生み出されているかを実感できました。
間近で井波彫刻のすばらしさを体感できると思うので、是非立ち寄ってみてください。
井波の名家「斎賀家」〜上質な町家と土蔵
井波の名家「斎賀家(さいがけ)」は江戸時代末期に建てられた町屋づくりです。柔らかな光が入る母屋の雰囲気を感じながら進んでいくと、奥には土蔵が保存されています。
真白な土壁に重厚な扉、基礎にはきめ細やかで美しい笏谷石(しゃくだにいし)が使用されています。扉の内側には、さらに鍵付きの大きな引き戸。この引き戸は欅の一枚板で作られており、漆が塗られています。巾着の形をした鍵金具には、縁起物の文様が繊細に彫られています。柱にはヒバ、床板には栗の木が使われ、釘を使わずに組まれた内部も丁寧に造られています。
細部にまで最高の素材と手間を惜しまず造られた土蔵は、相当の財力があってこそ。とても貴重な文化財を是非ご覧くださいね。
瑞泉寺〜井波彫刻発祥の地
井波彫刻発祥の地である瑞泉寺。本願寺第5代綽如上人が開創した瑞泉寺は、井波彫刻の素晴らしさを存分に堪能できる、まさに木彫刻美術館です。
江戸時代後期に完成した山門には、見事な井波彫刻が隙間なく施されています。山門唐狭間(からさま)の龍の彫刻は、井波の木彫刻の祖、前川三四郎の作品です。明治時代、本堂の火災で火勢が山門に移りそうになった際、龍の彫刻が抜け出し井戸の水を吹きかけて類焼を防いだと伝えられています。
お堂の内部では、繊細で迫力を持つ唐狭間が目に飛び込んできます。緻密に彫りこまれた唐狭間は圧倒的な存在感を放ち、思わず見入ってしまいます。井波彫刻は見た目の美しさだけではなく、長い年月をかけて培われた卓越した技術と、厚い信仰の心が重なりあい生み出されたのだと感じます。そういった見えない力のようなものが、井波彫刻発祥の地「瑞泉寺」で感じることができました。
井波の人々にとって、瑞泉寺は今もなお心の拠り所であり、暮らしと深く結びついた存在です。寺院の周囲に築かれた石垣が、地域全体でお寺を守り続けてきた歴史を物語っています。
太子堂は、太子堂としては日本一の大きさを誇り、明治時代に再建された歴史ある建物です。その堂内外には、井波彫刻の高度な技術が余すところなく注ぎ込まれています。
太子堂は、彫刻師たちが技術を磨くうえで「お手本」とする存在でもあります。構造から装飾に至るまで、卓越した彫刻技術が凝縮されており、細部を見れば見るほど、完成度の高さに圧倒されます。なかでも注目したいのが、4つの流派が競って創り上げた手挟(たばさみ)です。躍動感あふれる表現と緻密な彫りは、単なる建物装飾の枠を超え、ひとつの芸術作品となって強い存在感を放っています。
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瑞泉寺ナイトミュージアム
ナイトミュージアムでは、明かりに照らされてできる陰影がより一層木彫刻の美しさを引き立てます。昼間とはまた違う木彫刻の美しさを感じると同時に、幻想的な瑞泉寺を体験できます。
もっと見る蚕堂〜木々に囲まれ静かに建つ社
井波八幡宮の中に静かに佇む「蚕堂(かいこどう)」。かつて養蚕と絹織物で栄えた井波では、「蚕堂」がとても大切されています。江戸時代末期に造られた社殿は井波彫刻で飾られています。
かつての井波城の本丸跡に建てられている井波八幡宮は、木々に囲まれて静寂に包まれています。清々しい空気を感じてみてください。
井波八幡宮の境内には、樹齢500年以上と言われる「松島大杉」が。真っすぐに伸びる杉の木は、井波をずっと見守ってきました。是非木の温もりを感じてくださいね。
臼浪水(きゅうろうすい)〜瑞泉寺発祥の地
近くには井戸があり、「臼浪水」と呼ばれています。綽如上人が京都へ向かう途中、乗っていた馬が立ち止まり足で地面をかいたところ、そこから湧水がでたと伝わります。綽如上人はこの不思議な出来事に感激し、後に「瑞泉寺」となるお寺を建てました。
「井波」という地名や、「瑞泉寺」の由来となった始まりの場所です。緑に囲まれた静かな場所で、一休みすることができます。
「黒髪庵」でぐい呑みづくり〜井波彫刻体験
八日町通りから細い路地に入り、静かに佇む「黒髪庵」へ。ここでは井波ならではの、木彫刻体験でぐい呑みを作ることができます。
体験時間は1時間ほど。初めに木槌と鑿の使い方を丁寧に教わりながら少しずつ木を彫り進めます。初めは思うように刃が入らず、出来上がるまでかなり集中する難しさを感じますが、形が見えてくると、自分なりのイメージが見えてきました。その思いをまた別の彫刻刀で使い分けしながら形にしていく工程はとても楽しい時間でした。仕上げに焼印を押して、オリジナルぐい呑みが完成します。
木と向き合い手を動かすことで、井波彫刻の奥深さと職人の技に触れる、印象深い体験でした。
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出来たぐい呑みで地酒を試飲
出来上がったぐい呑みを持って蔵元「若駒酒造」を訪れると、地酒が試飲できます。若駒酒造の日本酒は庄川上流の伏流水を使用し、地元の米で丁寧につくられています。店内には魅力的な日本酒が沢山並んでいます。是非訪れてみてください。
「蕎麦懐石 松屋」〜町家の絶品手打ち蕎麦
体験を終えた頃には、すっかりお昼。お昼ごはんは、八日町通りの「蕎麦懐石 松屋」へ。
ここでいただいたのは、「さらしな天せいろ」。真白で透明感のある更科蕎麦は、ほどよい歯ごたえで喉越しが抜群です。揚げたての天ぷらは衣がサクサクと軽く、素材の旨味が引き立っています。
八日町通りに面したテーブル席に座り、井波の町並みを眺めながら過ごすランチタイム。落ち着いた店内で味わう食事は至福の時間でした。
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haiz coffee roastery (ヘイズコーヒーロースタリー)
古い町並みに溶け込む新しいお店にも注目
井波の町なかには、空家をリノベーションした素敵なお店がいくつもオープンしています。伝統的な古い町並みに溶け込みながら、新しい風が吹きこまれ、ますます町巡りが魅力的なものになっています。
越中一宮「高瀬神社」
高瀬神社は、約2000年前に創建されたと言われる神社です。主祭神は「大国主命(おおくにぬしのみこと)」。縁結びや福の神として知られており、多くの人が訪れる神社です。
大国主命の「因幡の白兎伝説」にちなんで、「なでうさぎ」や兎モチーフのお守り、兎の日には限定御朱印がいただけます。
井波彫刻総合会館〜伝統と進化する木彫刻
「井波彫刻総合会館」は、井波の彫刻師の作品が一度に鑑賞できる施設です。
間近に見ることができる木彫刻は、木槌と鑿だけで造られているとは思えないほど曲線はなめらかで、その完成度に驚かされます。伝統的な彫刻はもちろん、現代アートに近い作品もあり見応えがあります。
お寺の修復から始まった井波彫刻は、人々の暮らしの中に広がりました。この会館では、木彫刻の歴史とともに、今も進化を続けながら受け継がれていることが実感できました。
また館内には「シークレット彫刻」なる遊び心のある展示や、獅子頭のガチャ「獅子ガチャラ」が設置されていたりと、鑑賞の合間につい笑顔になる仕掛けが施されています。
閑乗寺公園〜展望台から眺める美しい散居村
閑乗寺公園は井波の町から車で5分程、高台にあるので展望台からの眺めが最高です。またキャンプ場やコテージがあり宿泊が可能。キャンプ場は眺望のよいサイトや森に囲まれたサイトなどバリエーションに富んでいておすすめです。八乙女山の登山口もあり、森の散歩を楽しめます。
井波へのアクセス〜高岡駅からバスが運行
井波へは富山市街から車で約1時間。井波交通広場に駐車すると、八日町通り、本町通りがすぐそばです。
JR高岡駅からは路線バスが運行しています。本数は少ないですがバス1本で井波中心部へ行くことができ、とても便利です。
また金沢と南砺をつなぐ『南砺金沢フリーパス』や、新高岡・高岡から井波をつなぐ『井波・高岡 日本遺産フリーパス』(2026年4月1日発売予定)が販売されています。フリーパスは2日間バスが自由に乗降りできる上に特典が受けられ、お得に旅を楽しめるのが魅力です。
おわりに
いかがでしたか?3つの伝説が息づく神秘的な井波。日本遺産「井波」は日本一の木彫刻と信仰、人々の思いが育まれた特別な場所でした。是非井波を訪れて、井波の神秘を体感してみてください。
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この記事は、日本財団の助成による「観光地域づくり支援基金事業」の一部として、南砺市観光協会とタイアップしております。