深夜1時、富山の春は海の上で始まる。水橋漁港で見たホタルイカ漁
3月上旬の深夜1時。まだ多くの人が眠っている時間に、富山市の水橋(みずはし)漁港ではホタルイカ漁が始まっていました。春の富山を代表する味覚として親しまれているホタルイカですが、富山で獲れるホタルイカは鮮度がよく、身がふっくらして美味しいことで知られています。
今回は特別に、漁師さんの仕事に同行させていただき、出港から網上げ、帰港、選別までを見せていただきました。漁師さんの仕事を知ってからホタルイカを味わうと、いっそうありがたみを感じられます。
眠る町のとなりで、漁は始まっていた
水橋の定置網漁では、深夜から朝方にかけ、1日に数カ所の定置網を回って水揚げしていきます。
同行する私は考えうる限りの厚着をして港へ向かったものの、3月でも海の上の寒さは想像以上。冷たい海風で手がかじかんで、撮影用のスマホを握るのもやっと。さらに開始15分で船酔いしてしまった私が「今日はかなり海が荒れているのでは」と思っていた海を前に、漁師さんは「今日はそんなに荒れていないよ」とひと言。
自然の厳しさと戦いながら黙々と作業を進める漁師さんたちのタフさに感服です。富山湾の海で働く人の感覚は、まったく別世界でした。
静かなエンジン音のなかで進む、海の仕事
船の上では、エンジンの音が静かに響きます。暗い海の上を進む時間は、不思議と張りつめていて、ただ寒いだけではない緊張感がありました。
定置網へ辿り着き網を上げる時間になると、漁師さんたちは一気に動き出します。2艘で定置網を挟み、網の中に入っているホタルイカをタモですくっていきます。無駄な言葉はなく、黙々と、それでいて驚くほど手早く作業が進んでいきます。
海の上での仕事は豪快なものだと勝手に想像していましたが、目の前にあったのは、静かで、正確で、積み重ねられた技術の世界でした。
小さなホタルイカを傷つけないために
いちばん印象に残ったのは、ホタルイカを宝物のように扱っていたところです。定置網に入ったホタルイカを、身が傷つかないよう、さらにタモですくうようにして丁寧に集めていきます。その様子からは、小さな命を大切に扱う気持ちが伝わってきました。
なかには活かしたまま持ち帰るものもあり、鮮度へのこだわりにも驚かされます。普段は「春の味覚」として食卓でいただいているホタルイカですが、その背景には、こんなにも繊細で気の遠くなるような手仕事があるのだと知りました。
水橋食堂 漁夫で味わう、とれたての海の幸
そんな水橋の海の恵みを味わえるのが、水橋食堂 漁夫(ぎょふ)です。水橋漁港の目の前にある、地元漁師が営む食堂で、水橋漁港で水揚げされた新鮮な富山湾の海の幸を使った料理が楽しめます。水橋の海と漁の豊かさをぐっと身近に感じられるお店です。
また、水橋では、ホタルイカの選別作業やセリの見学、漁師さんの話、そして水橋食堂 漁夫での朝食まで楽しめる「ホタルイカ朝食ツアー(期間限定)」も実施されています。
現場を見て、話を聞いて、味わうことで、水橋のホタルイカをより深く体感できる特別な企画です。
ホタルイカの美しさやおいしさはもちろん、その背景にある漁師さんたちの仕事や、水橋という港町の営みまで、ぜひまるごと感じてみてください。