「富山の寿司はなぜうまい?」~知的好奇心をくすぐるモデルツアー作成記~

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「寿司といえば、富山」。その美味しさの理由を、地形や水、漁業の歴史からひも解く旅があるとしたら――。観光関係者向けの講座「美食地質学から学ぶ『富山の寿司』はなぜうまい?」の最終回では、これまでに学んだ知識をもとに、参加者自らが旅行者の知的好奇心を刺激する2泊3日のモデルツアーを作成した。本記事では、その中から筆者が参加したグループの企画を中心に、学びを旅の行程に落とし込んでいく過程をレポートする。

土地の個性と食をつなぐ、物語のある旅づくり

はじめに、“美食地質学”の創始者である巽好幸氏(たつみ・よしゆき=ジオリブ研究所長・神戸大学名誉教授)が「これまでの講座で伝えた、土地柄と食を結ぶ物語を、ぜひ旅の形にしてほしい」と参加者に呼びかけた。
その後、参加者は各グループに分かれ、モデルツアー作りに挑戦。観光地を並べるだけでなく、「なぜ富山でこの食文化が育ったのか」を体感できる行程を目指し、議論を重ねていった。

インバウンド旅行者を対象としたコース作りに励む

筆者の参加したグループが想定したのは、欧米から訪れる食文化への関心が高い富裕層の高齢者。ただ食べるだけでなく、その背景にある自然や人の営みまで知りたい――。そんな旅行者像を描きながらツアーを組み立てていった。

候補に挙がったのは、
・握り寿司やますずし作りの体験
・富山湾の魚を支える定置網漁を学ぶ施設見学
・名水に育まれた地酒の酒蔵巡り
・観光列車「一万三千尺物語」で味わう富山湾鮨
いずれも、「なぜ富山なのか」を説明できることが重要なポイントだった。

【1日目】射水・漁港と人の暮らしに触れる

旅は富山駅からスタート。ジャンボタクシーで射水市へ向かい、運河が残る内川地区を散策する。"日本のベニス"とも称されるこの場所では、漁業とともに生きてきた町の空気を感じられる。
続いて訪れるのは新湊漁港。昼セリを見学し、富山湾の魚がなぜ高い鮮度を保てるのかを現場で学ぶ。その後、名物のベニズワイガニを味わい、寿司塾では職人から直接手ほどきを受けながら握り寿司に挑戦する。
夜は内川沿いの一棟貸し民泊へ。地元漁師を招き、調理しながら語らう時間は、この土地の暮らしを最も身近に感じられるひとときだ。

【2日目】氷見で知る、ブリと定置網の世界

2日目は高岡市の道の駅「雨晴」からスタート。立山連峰と富山湾を一望する景色を前に、自然への畏敬と、その恵みを実感する。
氷見市では名物の氷見うどんを味わい、「ひみの海体験館」でブリ漁や定置網漁について学習。魚を“獲る”現場を知ることで、食体験がより立体的に理解できるようになる。
夜は温泉付きの民宿で、寒ブリの舟盛りと氷見牛を堪能。海の幸と山の幸が共存する富山らしい夕食だ。

【3日目】富山湾を走る、特別な締めくくり

最終日、一行はジャンボタクシーにて氷見の民宿を出発し、富山市中心部へ移動。「富山市ガラス美術館」や「池田屋安兵衛商店」などを巡り、ガラス文化や商いの歴史に触れた後、観光列車「一万三千尺物語」に乗車。車窓から富山湾を眺めながら味わう「富山湾鮨」は、この旅の集大成。自然、産業、人の営みが一皿につながっていることを、五感で実感できる時間となる。

多様な視点を取り入れた各グループの発表でさらなる学びに

発表会では、立山信仰を軸にした精神文化のツアーや、水をテーマに山から海へとたどる旅など、多彩なプランが紹介された。

それらを聞く中で、筆者自身も気づかされたことがある。観光スポットという“素材”をどう組み込むかに意識が向きすぎると、旅の目的がぼやけてしまう。まず伝えたい物語があり、そのために場所や体験が選ばれる――そんな視点の大切さを改めて学んだ。今回は射水と氷見の海の幸をメインとしたが、時間効率良く巡るための観光素材の配置に比重がかかっていた部分もあった。例えば、地元の語り部と1日ずつ同行するなど、両地区の昔からの産業である漁業の歴史や、それに伴った住民の食文化や習慣をさらに深掘りする仕掛けがあれば、旅行者の知的好奇心をもっとくすぐるツアー作りになったのではないかと感じた。

最後に

全3回の講座を通じ、富山の寿司がおいしい理由は、魚種や鮮度だけでなく、地質や水、漁業の知恵、そして人の営みによって支えられていることが見えてきた。「富山湾は天然の生け簀」とされる背景を知った今、寿司は単なるグルメではなく、富山という土地の物語を語る入口になる。この学びを、これからの旅づくりや発信に生かしていきたい。

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