富山の食に寄り添う酒。高岡・清都酒造場が醸す「勝駒」
富山県高岡市にある「清都酒造場」。ここで造られているのが、日本酒「勝駒(かちこま)」です。
創業は1906年。小さな酒蔵で、現在も少人数による酒造りを続けています。
今回は、代表取締役社長であり、自ら酒造りにも携わる清都浩平さんに、「勝駒」が目指す味や、受け継いできた酒造りについて伺いました。
目指すのは、「富山の食に合う酒」
「僕らは富山の酒蔵なので、この土地の食に合ったものを造りたい」
清都酒造場が目指しているのは、酒だけで完結するのではなく、料理とともに楽しめる酒です。
例えば、富山のおいしい魚。刺身をひと口食べて、酒を飲む。
魚のおいしさを残しながら口の中をすっと整え、自然とまた次のひと口が食べたくなる。
「食べて、飲んで、また食べたくなるようなお酒」
それが「勝駒」の目指す姿です。
だからこそ、「この料理にはこの酒」と組み合わせを細かく決めることにも、あまりこだわりません。
刺身を食べ、焼き物、煮物へと料理が進んでも、一本の酒を自然に飲み続けられる。
特定の一皿だけに合わせるのではなく、食事の最初から最後まで寄り添える酒であることを大切にしています。
受け継がれてきた、酒造りの技術と感覚
清都酒造場の酒造りには、かつて蔵を支えた能登杜氏や蔵人たちから受け継いできた技術があります。
昔は、冬になると杜氏が蔵人たちとともに酒蔵へ入り、酒造りを行うという形が一般的でした。農業や漁業を本業とし、冬の間は酒蔵で働き、春になると地元へ戻る。そんな職人たちが、日本各地の酒造りを支えてきました。
酒造りでは、米や麹、発酵の状態など、さまざまな変化を見極める必要があります。温度などの数値だけでなく、目で見て、香りを嗅ぎ、味を確かめる。長年の経験によって培われた職人の技術や感覚が、清都酒造場にも受け継がれています。
もちろん、現代の日本酒造りでは研究や技術も進歩し、新しい科学的な方法など、さまざまな手法で品質を高めたり、目指す味わいを追求したりできるようになりました。
しかし、清都酒造場が大切にしているのは、さまざまな方法がある中で、これまで受け継いできた技術を活かすからこそ生み出される、おいしい「勝駒」の味を造り続けること。「これしかない」と思っているので、どれを飲んでも勝駒だと思ってもらえるように、時代とともに酒造りを取り巻く環境が変わっても、その軸は大きく変えていないといいます。
「造らない」のではなく、「たくさん造れない」
「勝駒」といえば、なかなか手に入りにくい日本酒という印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、希少性を高めるために、意図的に生産量を抑えているわけではありません。
清都酒造場では、現在も少人数で酒を造っています。
古い蔵で、人の手をかけながら一つひとつの工程と向き合っているため、一年間に造れる量にはどうしても限界があります。
「あえて造らないんでしょう、と言われるんですけど、そうじゃない」
量を増やすための方法はいろいろあります。それが良い、悪いということではなく、自分たちが大切にしている造り方を続けていくと、造れる量には限りがあるのだといいます。こだわっているからこそ「勝駒」の種類も絞っているそう。
「勝駒」の生産量の少なさは、希少性を狙ったものではなく、今の酒造りを続けた結果なのです。
「勝駒」は、気楽に食卓で
では、「勝駒」をどんなふうに楽しんでもらいたいのでしょうか。清都さんが話してくれたのは、意外なほど気取らない楽しみ方でした。
特別な酒だからと大切に取っておくのではなく、少しおいしいものを用意した日に、みんなが集まる食卓で気楽に楽しむ。
おいしい魚を食べ、勝駒をひと口。そして、また料理へ。
「大事にしすぎず、気楽に飲んでもらえれば」
インタビューの後には、長い年月を重ねてきた清都酒造場の母屋も少し見せていただきました。
高岡で受け継がれてきた酒造りと、富山の食に寄り添う「勝駒」。富山のおいしいものと一緒に、気負わずゆっくり味わってみてはいかがでしょうか。